全国津々浦々でハッケン!風景印~直径36mmに詰まった郷土愛~

日常の風景が「旅」に変わる!
郵便局から一生ものの趣味をはじめよう。

みなさんは「風景印」という消印をご存知ですか?

一般的に郵便局で押される消印は“日付”と“郵便局名”が書かれたごくシンプルなもの。

一方で、風景印はその局周辺の“名所旧跡”や“特産物”も描かれている、ちょっと特別な消印のことです。

私が風景印とであったのは大学生の頃。高知へ旅行したときに、ガイドブックに「龍馬郵便局」なるものが載っていたのがはじまりです。

ここでは窓口で手紙やハガキを出すと、高知県ゆかりの坂本龍馬が描かれた消印を押してもらえるのですが、手紙を書く機会も少なくなり、自分宛てのハガキに押印してもらうという知恵も浮かばなかった当時の私は、あえなく断念。その後も風景印は私の気になる存在であり続けました。

ところが!改めて調べてみると、風景印は全国各地の郵便局に置かれているとのこと。しかも全部で11,000もの郵便局が風景印を持っているというのです!

もともと駅スタンプをコレクションしていた私、これは集めないわけにはいきません…!!

ここから私の風景印収集の旅がはじまりました。

まずは集め方について知ろう!

風景印を押してもらう方法は、大きく分けて3種類あります。

1、郵便局の窓口で出す手紙やハガキに消印として押してもらう
「引受消印」

2、旅の記念やコレクションとしてハガキ、もしくは合計63円(ハガキ1枚分の金額※2020年2月現在)以上の切手が貼られているものに押してもらう
「記念押印」

3、押印してもらいたい郵便物やコレクション用のシートを郵送し、押印して返してもらう(orそのまま出してもらう)
「郵頼」

私は主に「記念押印」と「郵頼」とで風景印を収集しているのですが、その際に気をつけないといけないのが、

開局日時郵頼の到着日

です。

風景印を扱っている郵便局は大小さまざまですが、本局以外の小さな郵便局だと閉まるのが基本的に17時。土日・祝日は開いていないところがほとんどなので、記念押印をしてもらうには平日の9~17時に郵便局を訪れないといけません。

しかも、押してほしい日にちがあったとしても、それが土日(開局していない日)であったり、押印希望日を過ぎて郵頼が到着してしまった場合は、押してもらうことができないのも注意が必要なポイントです。

まだそんなルールを知らなかった頃、一度、ある郵便局に郵頼をしたことがあったのですが、その際に営業していない土曜日の日付で押印を希望していて、しかも依頼書の文面に電話番号を書かなかったことで、印が押されずに返ってきたことがありました。
そのときの返送用封筒には郵便局員さんからの手紙が同封されていて、開局していない日付では押印することができない決まりと、電話連絡ができなかったから異なる日付で押せなかった旨が書かれていました。
白紙のシートを見たときは「月曜日の消印でよかったのに~~!」と歯がゆく感じたものの、そのときにはじめて風景印にまつわる厳密なルールと、コレクターの方々のこだわりが垣間見え(押印日がかなり重要なのだろうこと)、俄然、収集意欲がわいてきたのを覚えています。

風景印をもつ郵便局とデザインがわかる
『新・風景スタンプ集』は必携!

私が風景印を集めはじめた頃は、どの郵便局にどんな風景印が置かれているのかわからず、訪れるごとに「こちらは風景印を置いていますか?」と聞いていました。あればラッキー!なければ次へ!という感じで、かなり非効率的な集め方で、しかも初期の頃は普通の50円切手を貼った名刺サイズのカードに押してもらうという単調な収集スタイルをとっていたため、コレクションも彩りを欠いていました。

▼一番はじめにもらった「神戸中央郵便局」の風景印。ちょっと地味…。

そんなことを続けていたとき、たまたま「左京郵便局」の風景印が「京都の催事(送り火)」の切手と奇跡的に合致!

「なんと美しい……!!」

とそのマッチングに感動し、(これが意図的にできたら!)ともくろんでいたところ、なんとそんなコレクターの心を見透かした本を発見!それが『新・風景スタンプ集』(日本郵趣出版)でした。

created by Rinker
¥1,650 (2024/03/29 07:14:46時点 Amazon調べ-詳細)
created by Rinker
¥841 (2024/03/29 20:29:11時点 Amazon調べ-詳細)
created by Rinker
¥2,470 (2024/03/29 22:36:23時点 Amazon調べ-詳細)

この本は「北海道・東北」「関東・甲信越」「北陸・東海・近畿」「中国・四国・九州・沖縄」の4部構成で、全国約11,000種類の風景印を網羅している、いわば風景印の図鑑です。

ここには

郵便局名
風景印のデザイン
郵便局の住所
風景印に描かれたものの解説

が書かれていて、眺めるだけでその土地の名所・名産が伝わってくる、とてもおもしろい本です。

有名な観光スポットだけじゃない!
風景印のモチーフは暮らしのあちこちに。

この本を眺めていると、いわゆる“観光地”と呼ばれる場所以外にも、その土地土地で誇れるものがたくさんあることに気づかされ、とても豊かな気持ちになります。

それまでは県単位で名所や名物を把握している感じだったのが(たとえば大阪府だと大阪城とたこ焼きといったような)、大阪市だけでも24区それぞれに区の花があり、それが風景印にも活かされているというミクロな情報も得ることができます。

この本とであってから、何気なく暮らしていた自分の街にも歴史や風土が横たわっていたことに気づかされるとともに(ふだんの暮らしにこんなに知らない情報があふれていたなんて!)、めざす郵便局がしぼられ、収集の旅がより効率的なものになりました。

地元の人しか通らないような何気ない道に、一気に“旅感”が増してきたのがこの頃です。

絵柄をあわせると物語がぐっと広がる!
切手と風景印の「マッチング」。

さて、めざす郵便局と風景印のデザインがわかったところではじまったもうひとつの楽しみ、それが切手と風景印の「マッチング」でした。

普通切手に押してもらうのもいいですが、切手と風景印の柄があわさると、ふたつの魅力がより引き立てられて、コレクションがさらに楽しく華やかになります。

ふるさと切手のように風景印とぴったりあう柄がなくても、関連するモチーフが描かれた切手を選べば、コレクションの味わいはより深まります。

また、年賀状やバレンタインデー、結婚式の招待状など、送る用途にあわせて風景印と切手を組みあわせると、受け取った側にもうれしい気持ちが伝わるでしょう。

▼“マッチング沼”にはまるきっかけとなった「左京郵便局」

バラの切手が集まったら、
乗り放題きっぷをもっていざ収集の旅へ!

活用できそうなデザインの切手がある程度集まると、次にとりかかるのがマッチングする風景印をもつ郵便局を効率的にたどれるルートの設定です。

前述したとおり、一般的な郵便局は土日・祝日は閉まっているため、平日に動けるタイミングを探し、一日でまわれる郵便局の位置をピックアップ!移動手段のない私には、電車の一日乗り放題きっぷが心強い味方になります。(私は風景印コレクターであり半・鉄子でもあります)

ある一日で私が「阪急阪神1dayパス」でめぐった風景印をご紹介しましょう。

▼尼崎道意郵便局から始まって…13局まわりました!

ばっちりな柄ばかりではありませんが、いろいろなところで集めた切手が沿線上で連なるルートに設定できたとき、ロイヤルストレートフラッシュのような快感が……!

この日、この人、この切手が重なって、
ただひとつの作品が生まれる。

風景印を集めていておもしろいのは、同じ絵柄であるにもかかわらず、押されたスタンプは「ただひとつ」しかないことです。なぜなら、日付はもちろんですが、押された位置や陰影の濃淡など、押す人によって絶妙に“性格”が映りこむからです。

「郵頼」で届いた風景印を眺めていると、

「この人は押し慣れてるな~」とか
「几帳面な人だろうな」とか
「緊張して力が入ったのかも」など、

一つひとつに表情が異なっていて、見ていて飽きません。

それにコレクターの個性である切手が加わると、プレミア感がよりアップ!

自分だけでは完結しない“合作感”や、どんな押し手に当たるかわからない“ドキドキ感(ギャンブル性?)”も、魅力のひとつなのではないかと思います。

失敗しても、旅のいい思い出に。
郵便局員さんとの会話にもホッコリ。

「風景印の押印をお願いします」と伝えると、郵便局員さんの反応もさまざまなのが収集をしていて楽しいところ。

「私も集めているんです!」と共感してくれる人、きれいに押せるか何度も試し押しをしてくれる人、次の郵便局への行き方を教えてくれる人…、みなさんとても親切にしてくださいます。

押し慣れた人に当たればラッキーですが、たまに緊張して失敗してしまう人も。そのときは「あちゃ~!」と思うけれど、旅から帰って振り返ってみると、案外そのことが旅の細部を思い起こすよすがとなっているのもおもしろいところです。

一生かかってもきっと攻略しつくせない
この「無理ゲー」に、ぜひ挑戦を!

約10年間の収集歴で、集まった風景印は約400枚。

これだけ集めても、まだ全体の3%しか集まっていないことに愕然としますが、残り97%も未知の旅が残されていると思うと、挑戦のしがいがあるというもの。

私はきっと、一生この攻略不可能なゲームに魅了され続けていくことでしょう。

旅の思い出にもよし、テーマを決めて集めるもよし、人に贈って楽しませるもよし。

あなたの街の郵便局が、一生ものの趣味の入り口です。

一旦はじめると日本全国が遊び場になる風景印の世界へ、あなたも飛び込んでみませんか?