ここは、架空老舗書店の晴天書房。私はお店番のあんずです。
美男美女といえば、「モテる」「ちやほやされる」「いろいろと得をする」などのイメージがありませんか?
実際はどうでしょうか。「美男だから」「美女だから」と嫌味を言われることもあったりして・・・
今回は美男美女が登場する小説を4作品ご紹介しましょう。
お店の常連さんに、おすすめの本を聞きました。
晴天書房の常連たち
美女は性格が悪いがいい。YUMMY 美男の影は薄いけれど、美女は小説の中では数多出てくる。私は男に翻弄される弱っちい美女より、気の強いヴィランの方が魅力的だわ。
「マスク美人」にすらなれない マロン 私の知る美人はたいていひょうきんで気遣い上手。たぶん他人から妬まれないための知恵。美男美女も大変だ。
乙女と呼ばれたことがない ひかりん 夜の街をブラついて出逢った人とお酒を飲む。引きこもりが故にそんな一期一会を楽しむ学生ではなかった。
昔からギャップ萌え ぐっち 美形よりもクセのあるキャラクターが好きな私。当時の推しも、やっぱり井宿(ちちり)でした(笑)。
資産もコネもないから
稼ぐために、弁護士になった。
【あらすじ】 「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という謎の遺言状を残して森川栄治が亡くなる。御曹司の遺産の総額は約300億円。学生時代に彼と3カ月だけ交際していた剣持麗子は、美人ながら金に目がない辣腕弁護士で、犯人候補に名乗り出た栄治の友人の代理人として、元彼の死の真相を探りはじめる。
プレゼンテーター:
美女は性格が悪いがいい。 YUMMY
交際中の彼から差し出されたダイヤの指輪に、石が小さい!安物!と怒りまくる。上司とはボーナス査定が低いと席を蹴って辞めてやる!なんと痛快なヒロインが現れたものよ、と冒頭からつかみはOK。この金、金、金、すべてこの世は金しだいという強欲な美人弁護士が、高額報酬に釣られて元彼の死の真相を調べていくミステリーである。
元彼の元カノたちにも遺贈があり、ライバル心剥き出しの主人公だが、展開を追ううちにどんどん魅力的な人物へと変貌していく。
栄治が犯人に返しきれない贈り物をすることで復讐しようとする「ポトラッチ」や、熟知した警察組織を冷静に操る手腕など、現役弁護士の作者ならではの驚かされる仕掛けも随所にある。麗子さんと重なる?と想像してしまう楽しさも・・・。
あの姫川玲子が好きな私は、剣持麗子の続編にも期待したい。
2021年第19回「このミステリーがすごい」大賞受賞!

美貌の青年につきまとう
不穏な影と深まる謎
【あらすじ】 文学を志す美貌の青年・アダム。ある時彼は、表面上はチャーミングだが実は残忍でずる賢い性格の大学教授・ボルンと出会う。そして禁断の愛と突然の暴力に巻き込まれ、人生は思わぬ方向へ。40年後、アダムから友人に届いた手紙には衝撃の物語が描かれていた。
プレゼンテーター:
「マスク美人」にすらなれない マロン
主人公のアダムは名門大学に通うユダヤ系アメリカ人。出会う人がハッとするほどの美貌の持ち主ながら内向的で人と争うことを好まず、友人と文学の才能に恵まれ穏やかな日々を送っています。ところがその目立つ容貌ゆえにエキセントリックな教授・ボルンに気に入られ、日常に不穏な空気が漂い始めます。
そしてボルンの邪悪な正体が明らかになってからは苦悩の日々を過ごすことに。物語は単純にアダム対ボルン、という話にとどまらず、アダムと同様の美貌を持つ姉・グウィンの登場により、彼の家族の悲しい過去や姉との危うい関係も明らかになります。
さらに復讐を誓った彼が再びボルンに近づくと、ボルンの黒い背景が浮かび上がり・・・と物語はどんどん「インヴィジヴル=見えなかった領域」へ。書き手、語り手、聞き手、読み手がクルクル変わることで事実が曖昧になり、読者も「翻弄される」楽しさを味わえる一冊です。

クセ強キャラしかいない
ドタバタ!ファンタジーらぶ
【あらすじ】 「黒髪の乙女」に想いを寄せる「先輩」は、京都のいたるところで彼女の姿を追い求めては、“偶然の出会い”を装った。そんな2人に次々と起こる、個性溢れる曲者たちとの出逢いと珍事件の数々。はたして「先輩」の恋は実るのか!?
プレゼンテーター:
乙女と呼ばれたことがない ひかりん
純粋な「黒髪の乙女」が「こうして出逢ったのも、何かの御縁」という口癖とともに京都の町を練り歩き、良くも悪くもすべての出逢いを楽しんでいる様は、探求心旺盛で可愛らしい。
そんな彼女を求めて京都の街を駆け回る「先輩」はもはやストーカーそのもの。「なるべく かのじょの 目に留まるようにする作戦」略してナカメ作戦を決行して彼女の周りをうろつく様子に「いや、だからストーカーやねん!」と何回ツッコんだことか。それでも互いに想像力豊かで妄想癖があるからか、どこか気の合う感じが愛おしくもあった。
底が知れない酒豪っぷりで春画を扱うクラブとは知らずに興味本位で入ろうとするなど、豪快だけど天然な彼女が「先輩」にはさぞ美しく見えたのだろう。直接的な描写はなくとも、彼女の言動・考え方からその魅力がひしひしと伝わってきた。
独特の文体であったが逆にそれがクセになって私はとても好き。京都好きにもおすすめの一冊だ。

巫女を守るイケメンパラダイス♡
あなたはどの七星士がお好み?
【あらすじ】 四神天地書に吸い込まれた中学3年生の夕城美朱(みあか)は、その世界で運命の恋人・鬼宿(たまほめ)と出会う。朱雀の巫女となった彼女は四神を巡る戦いに巻き込まれながら、巫女を守る宿命を持つ七星士とともに朱雀の力を借りて世界を救っていくラブファンタジー。
プレゼンテーター:
昔からギャップ萌え ぐっち
異世界ハーレムもの(?)の走りといえばコレ!な、伝説的な恋愛ファンタジー漫画。といっても、よくある「なんでこの子がこんなにモテるの?!」という主人公ではなく、美朱は愛の深さやまっすぐな気持ち(行動力)でみんなを惹き付ける真のヒロイン。
時々突っ走ってまわりをハラハラさせるけど、それが愛情の裏返しであると気づくことで仲間の絆が深まっていき、彼女が愛されることにも大きな納得感がある。(そして読者もどんどん応援したくなる)
今回、再読して大きくイメージが変わったのが美朱の親友・唯ちゃん。昔は意地悪な印象しかなかったけれど、青龍の巫女となり美朱と敵対することになった彼女にあるのもまた美朱へのエゴイスティックな愛情であることがわかり、この物語を動かしているのが二人の友情であることにも読み応えを感じた。
いとおしい人のために~♪見目麗しいキャラクターたちが愛の衝動に突き動かされる様に涙したいときにはおすすめのシリーズだ。

ご紹介した本まとめ

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