災害から本気で身を守る防災とは?自宅避難のための安全な家づくり

自宅避難

地震や豪雨、土砂崩れなど、日本では毎年のように自然災害が続いていますね。

世の中の防災意識は少しずつ高まっているようですが、皆さんはどんな災害対策をしていますか?

「そういえば、まだ何も用意してないなぁ……」という方は、ちょっとご用心を。

大きな災害時、「ある心理状態」にとらわれてしまうかもしれませんよ。

今回は、災害時に私たちがおちいる、やっかいな症状やその対策、防災に対するそもそもの考え方についてお話しします。

また、被災された方々が教えてくれた「やっておくべき防災の備え」や、「あってよかった防災グッズ」などもご紹介します。

これらの情報をもとに、赤ちゃんがいる、足の不自由なおじいちゃんがいる、など、それぞれのご家庭にあった災害対策を見つけてくださいね。

「防災」の考え方

防災とは、読んで字のごとく「災いを防ぐこと」です。

でも、実際の災害時をイメージできなければ、なかなかリアルに対策をたてることができませんよね。

「地震がきたら机の下に入ればいいんでしょ?」と考えている方は、動画サイトなどで、地震の瞬間の映像を探してみてください。

会社であれ、自宅であれ、ほとんどの方が、動けずにかたまってしまっています。

実はコレ、「凍りつき症候群」※1という症状で、大規模な災害時には、よく見られるそうですよ。
※1 予期せぬ事態が発生したときに動けなくなる状態

今後、経験したことのない大きな災害にあったとき、私たちは、今、想像しているとおりに動けるのでしょうか?

災害時、私たちはこうなります!

大きな事故や災害にあったとき、私たちは「凍りつき症候群」以外にも、次のような心理状態におちいることがあります。

【正常性バイアス】
「今まで大丈夫だったから今回も大丈夫」という思い込み

【同調性バイアス】
「みんな逃げないから大丈夫」という思い込み

これらのバイアスが話題になったのは、2003年に起きた韓国の地下鉄火災事件でした。

地下鉄の放火により、多くの命が奪われたいたましい事件ですが、その後、煙が充満する車内で、ただ煙たそうに座っている被害者の人たちの写真が公開されましたね。

平常心で見ているわたしたちは「なぜ逃げないの!?」と思いますが、後の、被害者の方へのインタビューから、この時、まさに正常性バイアスと同調性バイアスがかかった状態であったことがわかりました。
出典:「防災・危機管理心理学/防災システム研究所」 

「今まで大丈夫だったから今回も大丈夫」、「みんな逃げないから大丈夫」。

気持ちがわかりすぎるだけに、他人ごととは思えませんね。この事件では、約200人もの方が犠牲となりました。

日本でも、2014年、御嶽山の噴火で犠牲になった方々のカメラから、噴火直後の映像が見つかったという報道もありましたね。

こういった大きな災害だけではなく、「避難指示が出ているのに、なかなか避難しない」というのも、正常性バイアスがかかっている状態だと言われています。

凍りつき症候群や正常性バイアスは、事前の正しい知識や準備、日頃の訓練で回避することができるそうですよ。

普段から、「今、大地震がおこったらどう動く?」「この付近の安全ゾーンは?」など、イメージする習慣をつけておくのも、訓練になるかもしれませんね。

「動けなくなる」と想定した災害対策

もし、凍りつき症候群などの訓練をするのが大変なら、はじめから、動かなくてもいいようにしておくのもひとつの方法です。

例えば、大きな地震が起きたとき、まずやるべきことは身を守ることです。

その後、揺れがおさまったら、できるだけ早く3つの基本動作「ガスを止める」「ブレーカーを落とす」「出入り口を確保する」、を実行しなければなりません。

しかし、

◆「ガスを止める」の対策
→現在、すでに都市ガス、プロパンガスともに、震度5相当以上で安全装置が作動する

◆「ブレーカーを落とす」の対策
→地震を感知して配電を止める感電ブレーカーや、ブレーカー遮断装置をつけておく

◆「出入り口を確保する」の対策
→閉じ込められてもいいようにバールなど扉をこじ開けるための工具を準備しておく

と、いうふうに準備しておけば、大きな地震がきても、「まず、何をするんだっけ!?」と焦る必要はありませんね。

身を守ることだけに集中し、揺れがおさまってから、落ち着いて次の行動を判断できるのではないでしょうか。

もしかすると、「うちは慌てて動かなくても大丈夫!」という安心感から、逆に「凍りつき症候群」などになりにくいかもしれませんよ。

防災を考えるうえでの「そもそも」論

防災 落ちる割れもの

震災時にこわいのは「倒れるもの」「落ちるもの」「割れるもの」です。

家具の倒壊防止グッズや、家電製品の滑り止めなど、それらの対策はいろいろと紹介されていますが、家が大きく揺れるような地震では、どうしたって家具は倒れるし、インテリアは落ちるし、ガラスや鏡は割れます。

倒れる大きさの家具に転倒防止の伸縮棒をつけるより、「はじめから低いタイプの家具を選ぶ」、ものが落ちないように滑り止めを敷くより「はじめから高いところに割れものを置かない」など、「そもそも……」という考え方で防災を考える方が、スマートに災害対策が進むのではないかと思いますが……いかがでしょうか?

シミュレーションをしてみよう

大きな災害時、あなたの家ではどんなことが起こりそうですか?

地震を例にあげて、シミュレーションをしてみましょう!

震度7!あなたの家では何が起こる!?

地震 家の倒壊

過去の大震災で、その揺れは

「車でガタガタ道を走っているようだった」

「飛行機が落ちたと思った」

「家中、バーテンダーにシェイカーで振られたようになった」

などと表現されています。

それほどの地震が起きたとき、あなたの家ではどんなことが起きるでしょうか。

赤ちゃんが寝ている真上に、吊り下げ式の照明をつけていませんか?

家具が倒れてくる場所で足の不自由なおじいちゃんが寝ていませんか?

写真たてやおみやげの置物など、高い位置に飾っていませんか?

先ほどもお伝えしましたが、本当に身を守るなら、大きな地震では「家具は倒れる、インテリアは落ちる、鏡やガラスは割れる」、と考えて対策を練ることをおすすめします。

イメージしにくい場合は、動画サイトなどに掲載されている震災時の資料映像などを参考にしてはいかがでしょうか。

◆ 2011年3月11日 東日本大震災 発生の瞬間映像集

 

本棚の倒れかた、窓の割れ方、吊り下げ式照明が振り回される様子などがわかり、自分の家では何が起こるのかがイメージしやすくなりますよ。

起こることからわり出す災害対策

自分の家で何が起こるか想像できたら、対策も見えてきますね。

例えば、大きな家具の前で寝ている場合、

「寝室を大きな家具のない部屋に変える」

「家具の向きを変える」

「家具が完全に倒れてこないよう、向かいに低い家具を置く」

などの対策があります。

「家具のうえに転倒防止伸縮棒をつける」という方法もありますが、部屋の天井が弱い場合、転倒防止伸縮棒が天井を貫いてしまい、家具が倒れてくることも考えられ、少し不安が残ります。

例えば、阪神淡路大震災で亡くなった方(直接死5,483人)のうち、窒息・圧死で亡くなった方は3,979人でした。
出典:「阪神・淡路大震災の死者にかかる調査について(平成17年12月22日記者発表)/兵庫県

今、皆さんは、たくさんの方法の中から、より安全な対策を選ぶことができますよね。

「たぶん大丈夫だろう」という思い込みは捨てて、「これ以上安全な対策は考えられない!」くらいの方法で、自分や家族を災害から守りましょう!

今だからできる安全な家づくり

ガラス飛散防止シートイラスト

本気で防災を考えるなら、やはり「もの」は少ないにこしたことはありません。

震災直後、部屋中に散らばった「いらないもの」のかけらを拾い集めている自分を想像すると、ちょっとがっかりしませんか?

「なんで早く処分しておかなかったんだろう」「なんでこんな危ないところに置いていたんだろう」と後悔しながらかたづけているうちに、そのかけらで指を切ってしまったり。

大きな災害直後は、おそらく病院も通常どおりには機能しません。

小さな切り傷からウィルスに感染し、命取りになることも考えられます。

普段から、いらないものをためておかない、家具はロータイプを選ぶ、ガラスなどには飛散防止シートを貼る、高い位置に重いものや割れものを置かない、照明は固定式を選ぶ……、というふうに、災害時に自分や家族がケガをしない、避難通路をふさがない家づくりを心がけておきましょう。

安心して自宅避難生活を送るために

安心して暮らせる家づくりができたら、次は、防災の目線で普段の生活習慣を見直してみましょう。

被災された方々のお話しでは、次のようなことを習慣にしておくといいとのことですよ。

少しでも快適に自宅避難生活を送るため、ぜひ参考にしましょう!

普段から心がけておくこと

【車のガソリンは半分以下にしない】
災害後、「被災地までガソリンが届かない」「ガソリンスタンドそのものが被災」などの理由でガソリンが手に入りにくくなることが考えられます。

車が主な移動手段の地域や、車での避難生活を考えている方は、普段からガソリンを半分以下にしないように備えておきましょう。

【スマホ・家族分のスマホバッテリー】
災害直後、被災地では情報がとても重要になります。

東日本大震災では、津波の情報が入らず、海に向かって車を走らせている人も見られましたね。

防災アプリを有効にして、リアルタイムの情報を入手するためにも、スマホの電源が切れないよう、予備のバッテリーをスマホの台数分、用意しておきましょう。

☆ ONE POINT ☆
防災アプリを入れておくと、地震警報や洪水警報など、リアルタイムで危険を知らせてくれます。「Yahoo!防災速報」アプリのように、各都道府県と連携して、避難所の開設情報など、地域の情報が送られてくる防災アプリもありますよ!
《おすすめ防災アプリ》
「Yahoo!防災速報」「NHK ニュース・防災」「防災情報 全国避難所ガイド」など

【枕元など定位置にライトを置く】
災害時、街全体で停電が起きると、夜は真っ暗になってしまいます。

そんな中で、割れ物が散乱した家の中を歩くのはとても危険です。

玄関や枕元など、決まった場所にいくつかライトを用意しておくと安心ですね。

災害後、すぐに必要なもの

【家の中用のクツ・軍手】
災害直後は、割れものの破片が飛散していることが考えられます。

それらでケガをしないよう、まずは家用のクツや軍手で手足を守りましょう。

【ほうき・ちりとり】
手足を保護したら、次は、飛散している割れものの破片などを、ほうきやちりとりでかたづけます。

小さいもの、柄の長いものなど、何種類かあると便利ですね。

【ゴミ袋】
ちりとりに集めたものは、ゴミ袋に入れましょう。

「これ、捨てる?」と迷っても、いったんゴミ袋へ。迷っているものは、ガラスの破片などと一緒にしないように注意しましょう。

透明のゴミ袋なら、後から捨てるか捨てないかを、あらためて判断しやすいですね。

とにかく、散乱しているものをまとめて、生活できる空間を取りもどしましょう!

【ラジオ】
テレビがつくまでは、ラジオが大切な情報源となります。

音声を流しっぱなしにすることで、常に新しい情報を知ることができます。

電池がいらない手回し充電式やソーラー電池がついているものがあると安心ですね。

普段から時々使っておくと、災害時にチューニングなどで手間取ることもありませんよ。

自宅避難中にあると便利なもの

【自転車・台車】
災害後、がれきなどが散乱する街の中では、車が通れないことがあります。

そんなときに活躍するのが自転車、台車です。

自転車なら、少し離れたスーパーや役所に行くことも容易になり、台車は、水などの支援物資をもらいにいく際などに便利です。

【バケツ】
水道が復旧しない間は、手を洗ったあとの水をためておくなど、水を使いまわす必要があるかもしれません。

そんなときには、バケツがいくつかあると便利ですね。

また、近くの川に水をくみに行ったり、お風呂にためている水を移動したりするときなどにも使えます。

【現金・小銭】
災害直後でも、店内にあるものを、何とか販売しようとしてくれるお店があるかもしれません。

その場合、おそらくレジやカード端末機は使えないので、現金のみの販売になることが考えられます。

東日本大震災では、ガソリンや交通費なども、すべて現金でしか購入できない期間があったそうですよ。

公衆電話を使う際にも10円硬貨が必要なので、小銭や千円札を用意しておきましょう。

その他、食料品の備蓄はこちらでくわしくご紹介しています。

ローリングストックで非常食をらくらく管理!人気の非常食もご紹介

食料備蓄の簡単なはじめ方、進め方や、おすすめの防災食も掲載していますので、ぜひ参考にしてください!

日常バッグを非常バッグに

災害時、家屋の破損などで、一時的に避難所への避難が余儀なくされることがあるかもしれません。

そんなとき、あなたは何を持って避難所へ向かいますか?

いつものバッグに「もしも……」をプラス

平常時のカバンを非常持ち出し袋に

避難時、荒れた道を歩く際には両手をあけることができるリュックサックがおすすめです。

ただし、その中身は、結局のところ、いつも持っているものが一番便利なのではないでしょうか。

「非常持ち出し袋セット」などを買っても、結局、いらないものが多いといううわさも。
出典:「『防災グッズ完全ガイド』(株式会社晋遊社 2017年)」

いつものバッグに、2~3泊できる最低限のものをプラスする、持ちやすいバッグに変える、など、防災仕様にしておくと、いつどこで災害がおきても、そのまま避難することができますよ。

赤ちゃん、高齢者、ペット用品も忘れずに

ベビーバッグイラスト

赤ちゃん、高齢者、障害のある方など、非常持ち出し袋に必要なものは、家庭によってさまざまです。

特に、常備薬のある方、特殊な器具を必要とする方がいるご家庭は、普段からどう持ち出すか、代用できるものはあるか、などを考えて準備しておきましょう。

また、ペットは避難所に入れないことが多くなっているようです。

普段から、預けられる人を探しておく、ペットキャリーやゲージ、ハーネスなどを嫌がらないよう練習をしておくなど、対策をとっておきましょう。

☆ ONE POINT ☆
赤ちゃんとおでかけするときのベビーバッグ。おむつや消臭ビニール袋、飲み物、着替えなどがつまった優秀な持出袋ですよね。「災害の際にはこれを持って避難所へ行くことになるかも」ということを意識して、おむつなどをちょっと多めに詰めておきませんか。

登山のバックパックは最強の非常持ち出し袋

登山のバックパックは最強の非常持ち出し袋

登山者が背負っているバックパックは、山の上で数日間過ごすための衣食住が詰まっている、最強の非常持ち出し袋です。

◆登山者の主な持ちものとは?

【衣】
□帽子(直射日光や落下物から頭を守る)
□サングラス(太陽光・紫外線から目を守る)
□インナー(汗冷えを防ぐ素材)
□長袖・長ズボン(虫や枝葉などから肌を守る)
□レインウェア(雨や風、寒さから体を守る)
□登山靴(堅い靴底とハイカットで足・足首を守る)
など

【食】
□ガスボンベ・シングルバーナー
□チタンなどの軽い食器
□簡単に調理できる食材
□チョコやビスケットなど吸収率のいい行動食
□十分な水分
など

【住】
□テント
□寝袋
□寝袋マット
など

【その他】
□ヘッドライト
□地図・コンパス
□緊急用ホイッスル
□下痢止め・胃痛薬など応急セット
□ナイフなどがついたマルチツール
□トイレ用スコップ
□土に返るトイレットペーパー
など

安全に整備されている街中とは違い、山の中では、自分の身は自分で守らなければなりません。

そのため、登山者のバックパックの中身は、生きるために必要な最低限のもの以外に、あらゆる危険を想定したものが入っています。

非常持ち出し袋をつくるとき、何を入れるか迷ったら、アウトドアショップをのぞいてみると、何かヒントが見つかるかもしれませんよ。

まとめ

いかがでしたか?

今回は、

「災害時、人は動けなくなるので、いっそ動かなくていい対策を」

「高いところにものをおいて落ちない工夫をするより、そもそも置かないこと」

というような、防災における、根本的な考え方の見直しを提案してみました。

家具の買い換えや引っ越し、一人暮らしをはじめる際などに、ちょっと思い出していただけたら、と思います。

世の中には、いろんな防災のアイディアがありますが、どの家庭にも当てはまるものばかりではありません。

「災害時、自分や家族が絶対にケガをしない!命を落とさない!」という基本理念からぶれないように、ご家庭にあった災害対策を見つけだしてくださいね。

 

【出典】

◆『被災ママに学ぶ ちいさなぼうさいのアイディア40』(アベナオミ 株式会社学研プラス 2017年)

◆『地震イツモノート キモチの防災マニュアル』(地震イツモプロジェクト編 株式会社ポプラ社 2010年)

◆『りすの四季だより』(あんどうりす 新建新聞社 2017年)