2023年2月 書評テーマ「猫」

こは、架空老舗書店の晴天書房。私はお店番のあんずです。

みなさん、来たる2月22日は何の日か知っていますか?
にゃんにゃんにゃんっ!「猫の日」です!

国内の飼い猫数が飼い犬数を上回ったことがニュースになるくらい

最近は猫派が増えているようです。自由きままで、気高く美しいところが

疲れ果てた人を癒すのかもしれませんね。

今回は、猫がテーマの本をご紹介します。

お店の常連さん6人に、おすすめの猫本を聞きました。

晴天書房の常連たち

猫好きだけど猫アレルギー マロン
思いっきり猫と触れ合ったらすぐ手を洗い服をコロコロする、という形でアレルギーながらの猫との戯れを満喫。

ネコ好きの猫 ねこマタタビ
猫の姿をしていますが、中身は人間です。生まれてこのかた、ずっとネコと共同生活。どの子も拾ったネコ、どの子もかけがえのない家族です。

生粋の犬好き ひかりん
触られるのが嫌いな孤高犬と、秒で他人に腹をみせるデブ犬の2匹を飼ってる、バリバリの犬派。

本書が猫の名づけ親 ぐっち
実家には猫が6匹。昔飼っていた「ラフィー」と「ヨーデル」は、実はこの漫画からとったものでした。

ゆく猫くる猫・5匹目 よっすー
「猫が行方不明になったら、近所の猫に伝言を頼むと帰ってくるらしい」という噂を聞いた。もしもの時は試してみたい。

猫ふんじゃった! YUMMY
猫には縁がない人生。野良猫にはゴミをあらされ、花壇に排泄されて花を枯らした経験しかない。あっ、ピアノを習ってたときに“猫ふんじゃった”はよく弾いてたわ。

 

 

あざとかわいい猫が
小悪魔なテクニックを披露

【あらすじ】 ある日、編集者のもとに届いた暗号のような原稿。解読すると、それは猫が書いた文章だった!「快適な生活のため人間をどうしつけるか」というマニュアル本の形で、気まぐれで人間の思い通りにはならない猫の生態を、ちょっと意地悪なネコ視点で描いた物語。

プレゼンテーター:
猫好きだけど猫アレルギー マロン
突然どこかから猫が現れて、気がつくと家の猫になっていた、というのは猫を飼ったことがある人なら「あるある」なのでは?私の実家でも、そんな感じで代々の猫をお迎えしてきました。そんな彼ら(猫)に、実は「人間の家の乗っ取り方」のマニュアルがあった!というのが本書の趣向。

最初は猫を家に入れることすら拒否していた人間を、いかにメロメロにするか。お気に入りの場所(もとは人間用の椅子)を占領し、自分以外を座らせないようにするにはどうすればいいか。その恐るべき、そして愛すべき手練手管が次々に披露されていきます。

「なるほど、そんな計画にまんまとはまっていたのか」、「あのかわいいポーズはわざとやっていたのか」なんて思ってももう遅い!この本を手に取った時点で、きっとあなたは大の猫好きのはず。悔しがるどころか「もっとたぶらかして~」と思う人にこそ読んでほしい作品です。


まさかの猫視点!?私たちは罠にはめられていたのか・・・。

フォトジャーナリストを導く
1匹のネコと運命的出会い

【あらすじ】 著者の吉田さんは、ある雨の日、遊歩道で小さな叫び声を聞き、紙袋の中に捨てられていた生まれたばかりの子猫を拾う。猫・寅之介との突然の出会いは、避けられない運命として語られ、彼女のカメラがその存在を愛しむ眼差しとして、子猫の成長を追い続ける。

プレゼンター:
ネコ好きの猫 ねこマタタビ

著者の吉田ルイ子さんは留学先のニューヨークで写真と出会い、60年代のハーレムで黒人の住民と共に暮らした経験からフォトジャーナリストとしての道を歩み始めた人だ。ベトナム、中東、アフリカなど、世界の62か国をめぐり、差別や社会の問題をヒューマニティ溢れる写真で切り取ってきた。

そんな吉田さんが出版した唯一の「猫のフォトエッセイ」が本書だ。いや、唯一の「家族のアルバム」と言ってもいい。穏やかに語られる寅之介との生活、すくすくと育つ子猫の無垢な瞳、小さな命を育みながら思う、血の繋がりがない母から受けた無償の愛。

世の理不尽をやさしい眼差しで社会に問い続けたフォトジャーナリストの心の原点を感じる一冊は、小さな猫という命を通じて、自由と、自然を大切にし、しなやかな生き方を愛する「ネコロジスト」達へのギフト。初版から30年を経ても色褪せない、私が無人島に持って行きたい一冊でもある。

ネコロジストにはたまらないっ!

 

もしや猫の姿をした化身?
「お告げ」が示す道しるべ

【あらすじ】 悩める7人がふと立ち寄った神社で出逢った猫・ミクジから授かったタラヨウの葉。そこにはもらった者にしか見えない言葉が書いてあったー。それが「お告げ」だと気づいたとき、思い悩む人たちの世界はガラッと変わっていく。心がほっこりする連作短編集。

プレゼンテーター:
生粋の犬好き ひかりん
7作ある中でとくに好きなのが『マンナカ』。主人公は小学生の男の子、深見和也。転校先で大好きな苔を馬鹿にされ、クラスに馴染めないでいた彼は、ミクジから「マンナカ」と書かれたお告げをもらう。それを、自分は苔と同じ「真ん中」になれない端っこの存在だ、と捉えたところに胸が痛くなった。でも「自分のいるところが真ん中。(中略)それがこの世界の、真ん中だ。」と気づいたときの彼の成長した姿にほろりと来ます。

ミクジがくれるお告げの言葉は、あくまでも「キーワード」だと思う。それをどう受け取って人生を切り開いていくかは自分しだいなんだろう。でもどのお告げも、君なら大丈夫と言ってくれているかのように、優しく心を包み込んでくれます。

ちなみに、郵便局のシンボルツリーでもあるタラヨウは「葉書」の語源と言われています。タラヨウの葉は実際に郵送できるので、友人に一言したためて送るなんて、粋なことでもしてみようかなと思いました。

お告げをくれるネコさまに私も出逢ってみたいです~。

猫の叙情豊かな内面世界にふれ
読むと猫が飼いたくなる

【あらすじ】 予備校生の須和野時夫に拾われた子猫・チビ猫を主人公に、猫の目から見た人間模様を描くファンタジー漫画。少女の姿に擬人化されたチビ猫と須和野一家の日常や、まわりの猫や人間たちとの交流、成長するチビ猫の姿などがリリカルなタッチで描かれている。

プレゼンテーター:
本書が猫の名づけ親 ぐっち
猫は成長すれば人間に変身できると信じていて、いつか人間になったら大好きな時夫に「ありがとう」と言うことを夢見ているチビ猫。そんな彼女が目にする世界はすべてがみずみずしく、毎日は冒険と発見の連続!海は大きな池であり、ペーパーサンド(猫砂)は宝石で、砂漠は見わたす限りの猫トイレ。また、出会いや別れによる心の機微に加えて、生と死の営みをまっすぐな瞳で理解していく様は、どこか哲学的ですらある。

基本的に一話完結型の物語で、チビ猫があまり登場しない回もちらほら。中でも3巻の『お月様の糞(フン)』は特におすすめ。年の離れたお隣の百済さんに恋する少女・歌音。はすっぱでいて健気な彼女が一匹の猫をめぐる秘密を打ち明けたとき、そのやるせなさと身を切るような恋心が切なく心に残る一篇です。

猫の目を通したこの世の美しさと希望。「ニャア」という声の中にそれらを聞き取りたくて、思わず猫との暮らしを夢見てしまうほどの魅力をもった作品です。

チビ猫が成長していく姿を、皆さんも漫画を通して見てください!

『世のすべての猫好きに捧ぐ』
ハインラインの永遠の名作

【あらすじ】 飼い猫・ピートは冬になるときまって「夏への扉」を探していた。家にあるドアのどれかひとつが、夏に通じていると固く信じていたのだー親友と恋人に裏切られ、無一文で西暦2000年に放り出されてしまったぼく。ピートが信じた夏への扉を探し出し、失ったものを取り戻すことはできるのか?!

プレゼンテーター:
ゆく猫くる猫・5匹目 よっすー
タイムリープものの元祖。時間逆行・未来の改変などを描き、打った布石を綺麗に回収していくというあの黄金ジャンルを初めて確立した記念碑的作品である。『バック・トゥ・ザ・フューチャー 』など後のSFに多大な影響を与え、日本でも舞台化・映画化されるなど今も根強い人気がある。

そんな息の長いこの本は、同時に「猫もの」としても有名だ。何せ古い作品(1956年)なので少々引っ掛かる所もないではないが、「猫が助かるならヨシ!」と心の爪でバリッとやれてしまう程に猫小説なのである。飼い主にドアを永遠に開け閉めさせるピート。わがままで素敵な相棒。時代が変わっても、猫の魅力は少しも変わらない。

読後「夏への扉」というタイトルがじわじわ沁みてくる。遠い夏の日を思う時の、心のしっぽをきゅっと掴まれるような淡い切なさは、不思議とどのタイムリープ作品にも通じている気がする。

時間は儚く、二度と還らないからこそ尊い。それが分かっているから尚更、私たちは過去への扉を探してしまうのかもしれない。

「時代が変わっても、猫の魅力は少しも変わらない。」まさしく!!

弁護士事務所で飼われている美猫、
スコッティが推理する。

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【あらすじ】 弁護士事務所の事務員花織は、先生に寄せられる依頼を盗み聞きしては「おしゃべりする猫」のスコッティと噂話に花を咲かせていた。ある日、愛らしくも気高く、生意気なスコッティが推理合戦をしかけてきて、その架空の事件の筋書き通りに事件が起こってしまって、さぁどうする?

プレゼンテーター:
猫ふんじゃった! YUMMY
妻に先立たれた老弁護士は、妻の愛猫を事務所で飼う。事務作業と猫の世話係を兼務する花織は、暇な昼下がりには、もっぱらミステリーを読むのに夢中である。そんなある日「ねぇ、見立て殺人ってなにがおもしろいの?」と猫が横からチャチャを入れてきたのだ。

そんな時に資産家の妻のダイヤ(5カラット)の指輪と遺言状や会社の不正金の詫び状を金庫に預かることになる。推理好きのスコッティが「もし先生が殺されて、金庫の中身が奪われたら?」と仮説を立て、花織と推理合戦となって、あれこれ推理をしていると、なんと預かり品が奪われてしまう。

犯人捜しが始まり、花織はスコッティと推理していたことを話すが、警察をはじめ猫がしゃべるなんて奇想天外な話を信じる人間はおらず、花織は窮地に立たされて・・・・・・。真犯人は誰なのか?二転三転して翻弄されながら、後半は事件の謎解きへ。作者は弁護士というからプロットも面白く、美猫好きにはたまらないミステリーである。

猫×ミステリー。興味深いです。。。

 

ご紹介した本まとめ

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いかがでしたか?今回は猫の魅力がたっぷり詰まった6作品をご紹介しました。皆さんも、猫の日に猫小説を読んでみてくださいっ。