2022年10月 書評テーマ【韓国文学】

こは、架空老舗書店の晴天書房。私はお店番のあんずです。

一気に寒さも増して、金木犀の香りが秋の訪れを告げていますね。

近年は、ドラマや音楽だけではなく、本までもが人気の韓国。
今回はそんな韓国書籍にフォーカスしました!

お店の常連さんに、おすすめの本を聞きました。

晴天書房の常連たち

そろそろまた韓国行きたい! マロン
チマ・チョゴリ着たり、冬ソナの学校に行ったり、焼き肉食べたり、楽しかった韓国旅行。また行きたいな。

根っからのポジティブ ひかりん
普段から「まぁ、いっか」が口癖の私。切り替えの早さが持ち味の私が読んでも、気づきが多かった。

息子に重ねてしまい号泣 よっすー
この本ですっかりソン・ウォンピョンのファンになり、他2作も買いました。10月のトークイベント参加したかったな・・・。

ある女性の半生を通じて描く
韓国社会の根深い性差別

【あらすじ】3年前に結婚し、昨年女の子を出産したキム・ジヨンは、ある日突然、母親や知人がのり移ったかのような言動をし始める。その背景にあったのは、彼女の半生。誕生から学生時代、受験、就職、結婚、育児を振り返る中で韓国の女性を取り巻く問題が浮かび上がる。

プレゼンテーター:
そろそろまた韓国行きたい! マロン
韓国では「結婚しても女性は姓を変えなくていい」「子どもは母親の姓も選べる」と聞いていたので、勝手に男女平等が進んでいると思っていた私。この本を読んで驚かされました。

主人公のジヨンは私より年下なのに、彼女が生まれた頃はまだ跡継ぎのため息子を生まなければ「嫁失格」も時代。家でも学校でも男子が優先され、セクハラされても女子の責任です。ジヨンが大学を卒業する頃になっても、就職は男性が圧倒的有利で、出世も女性というだけで除外。

妊娠すると退職せざるを得ず、家事と育児の合間に外でコーヒーを飲んでいると「いい身分だな」と男性に嫌味を言われる。「ひどいな」と思いつつも日本は?と考えると、実はこうした問題が完全に解消されてはいないことに気づかされます。次世代のために自分にも何かできることがあるのでは?まずは息子たちの教育から・・・といろいろ考えさせられた作品でした。

韓国や日本に限らず、いつか女性がほんとうに生きやすい環境になるといいですね。

 

自分を殺して周りに合わせる
それで「心」は救われるのか

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【あらすじ】誰もがヒーローになること、特別な何者かになることを夢見ていた。けれど今では、世界どころか自分を救うことに必死な大人になってしまった。何が正解なのかわからない世の中で自分を認めて愛する方法と、今を生きる人へのいたわりと応援を詰め込んだ自己啓発本。

プレゼンテーター:
根っからのポジティブ ひかりん
学校で何に対しても「理由」を聞き返すことに「反抗的」「口答えしないで」と先生に言われるばかりの子供時代を過ごした著者が、大人になるにつれて「自分がとてもみじめで無力な人間に思えた」疑問に対する答えが書かれている。GOALとして挙げている「他人を妬むことなくありのままの自分として生きていく」ための考えが綴られていて、その思いの強さが伝わってくる本。

「あなたがいちばん尊重しなければいけない人は、常にあなた自身」「私たちは自分なりの答えをもつ権利がある。それは誤答ではなく、各自にとっての正解だ」この2文が印象的で、日々の中で自ら固定概念にとらわれて、世の中が決めた正解を選びがちな自分にハッとさせられた。

「あなたたち、人の好みを尊重しなさい」など、消化しきれないモヤモヤに対する一言がイラストに添えてズバッと書かれています。不幸ではないのになぜか不完全に、みじめに、孤独に感じるような、やりきれない思いを抱えている方におすすめです。

韓国は自己啓発本が多いようですね。

その感性は宝石のよう──
たとえ、君に感情がなくても。

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【あらすじ】扁桃体(アーモンド)が人より小さく、感情を持てない十六歳の高校生・ユンジェ。目の前で祖母と母が通り魔に襲われた時も、ただ無表情でその光景を見つめているだけだった。そんな時に現れた訳ありの不良少年・ゴニとの出会いは、ユンジェの人生を大きく変えていく。

プレゼンテーター:
息子に重ねてしまい号泣 よっすー
いくつか見たドラマの影響で「小説も感情の振れ幅が大きいのだろうか」などと雑な印象のまま手に取った「アーモンド」は私に新鮮な驚きをもたらしてくれた。

本作の語り手・ユンジェは失感情症だ。初期の村上春樹を思わせるようなドライかつソリッドな語り口で、淡々と悪夢のような悲劇を語り、母や祖母の暖かいエピソードを語る。誰も近づきたがらない乱暴者のゴニを少しも恐れないし、色眼鏡で見たりもしない。そんなユンジェにゴニは少しずつ心を開いていく。

終盤、ユンジェはある意外な行動をとる。「共感」を知らない彼なりに懸命に考えて出した答えに、胸を突かれる思いがする人はきっと多いことだろう。

この小説は韓国で三年間もベストセラーにランクインし続け、日本でも本屋大賞・翻訳小説部門で1位に選ばれている。この共感の難しい時代に、他者を思いやる隙間もない緊縮した国と国とで、この小説が高く評価されたことに私は勇気づけられた。

翻訳が美しかったので原文もおそらく綺麗なのだろうと想像する。イメージ喚起力に富んでいて心地良い美文。また折に触れ読み返したい。

書店でもよく見かける有名な本ですね!表紙に描かれている少年と、目が合ってまるで何かを見透かされているような感じがするのは私だけでしょうか・・・?

 

ご紹介した本まとめ

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いかがでしたか?経済的には発展していても、幸福度は低い日本と韓国。だからこそ、抱えている問題が似ているのかもしれませんね。