ここは、架空老舗書店の晴天書房。私はお店番のあんずです。
冬を迎えて、本格的に寒くなってきましたね。
寒い季節は、なんとなく恋愛ものが読みたくなります。
今回は、愛とか恋とかにフォーカスしましたよっ
お店の常連さんに、おすすめの本を聞きました。
晴天書房の常連たち
恋なんてしない。 YUMMY 好きな子にいじわるをする、なんて小学生か?と思っていたけれど、けっこう夫をいたぶっていじわるをしている自分に驚く。
猫のところにいる よっすー 恋愛系TV番組はどうにも眠くなってしまっていけない。1分に1回ペースで爆発が起きる恋愛ものとかどうですか?
不幸なままでいてくれ!
と願う初恋の行方。
【あらすじ】初恋、それは身も心も砕くもの?愛人が亡くなり、その息子を父が引き取ったことから、3姉妹が暮らす高見澤家に波紋を広げていく。三姉妹とその美しい母も、美少年に心を奪われ翻弄される。傷つけ合いながら胸を焼き、砕け散る恋の欠片たちは、プリズムのように輝いて。
プレゼンテーター:
恋なんてしない。 YUMMY
神戸からやってきて少年は力(リキ)は、次女の咲也と同じ学年に編入する。長女の麗子、三女の薫子たち3姉妹の生活は、リキとの生活によって変化していく。
子犬のようにリキにじゃれつく三女と違い、長女は下僕のように仕えさせ、次女は「家族の一員になるなんて許せない」とリキを監視してはいじわるを繰り返す。上流階級の夫人である母は、愛人の子である彼をいたぶるように温室の手伝いをさせる。
「おじさん、うちの母ちゃんのこと、好きで好きでたまらんかったらしいで」「男が女に夢中になるのをなんというか知っとう?首ったけや」なんていう愛人の子、リキを許せるわけがない、といいながら惹かれていく姉妹。
その日常の描写が映像のようで、自分の記憶の中のあのヒリヒリするような初恋の痛みをフラッシュバックさせる。『放課後の音符(キイノート)』の恋とは違うけれど、山田詠美さんの文章は温かく美しい。

圧倒的描写力で、直に脳へ届く
一穂ミチというBluetooth
【あらすじ】週に一度、母親が男と密会してる時だけ、あの子に会える。彼女と私は何もかもが違った。着るものも食べるものも住む世界も。彼女に惹かれたその日から、残酷な現実も平気だと思えた。ずっと一緒にはいられないと分かっていたけれど・・・。ひとつの愛に惑う二人の、四半世紀の物語。
プレゼンテーター:
猫のところにいる よっすー
どうしてこんなに文章がきらきらしているのか、なぜ読むのをやめられないのか、その不思議を解き明かしたくてのめり込むうち、いつしか中毒してしまう・・・一穂ミチはそういう作家である。
結珠と果遠はどちらも欠落の中で育った少女だ。その不遇のお陰で二人は出会い、急速に親しくなる。母親に何度心を折られても「あなたは光のところにいて」と言った果遠が結珠の自尊心を守り、果遠もまた、結珠のいる「光のところ」を目指そうと願ってひたむきさ失わない。
友情と呼ぶには濃すぎる思慕。翻弄される二人の結末は恋愛の至ってシンプルな根の部分を思い出させてくれる。「ずっと一緒にいたいと思う人は誰なのか?」
昨今は格差を描いた暗めの作品が増えたけれど、同じくらい性別に縛られない恋愛作品も増えたように思う。共通して根底にあるのは「自分らしさ」というところかもしれない。ままならなさを越え、自由を勝ち取る美しい話が、現実の中でもたくさん生まれてきますように。

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