初心者ガーデナーの皆さんは、植物の土づくりをどうしていますか?
園芸店では、いろんな種類の培養土が売られていますが、実は、土づくりは意外と簡単で、ハマるととても楽しいんですよ!
今回は、プランター培養土の作り方についてわかりやすくご説明します。
「水やりの回数が少なくてすむように」「室内だから清潔な用土で」など、ニーズに合せて、オリジナルブレンドの培養土を作ってみてくださいね。
(畑や花壇の土づくりとは異なりますのでご注意ください!)
目次
ガーデニングの土の基礎知識
園芸店で販売員をしていたころ、お客さまに「公園の砂場の砂とガーデニングの土はどう違うの?」と聞かれたことがあります。
私はめちゃくちゃ驚きましたが、皆さんはこの違い、わかりますか?
砂場の砂と培養土の違い
日本の「土」は、「火山灰」や岩石が風化した「砂」によってできています。
その「土」に、落ち葉や動物のフン、昆虫の死骸などの有機物が混ざってふかふかになったものを「土壌」といいます。
植物は、「土」だけでは育つことができず、「土壌」になってはじめて、根から水や養分を吸収して育つことができます。
土壌を、ガーデニングで使えるように加工したものが「用土」です。
ガーデニングでは、いろんな用土を組み合わせて、育てる植物にピッタリの「培養土」を作ります。
後ほど、くわしくご説明しますが、植物の栽培用に配合された「培養土」に対して、砂(川砂・山砂など)は「改良用土」と呼ばれています。
培養土の水はけを良くするため、培養土に1~2割ほどまぜて使います。
砂だけで育つ園芸植物はほとんどなく、ガーデニングで砂を単体で使うことは、あまりありません。
つまり、「公園の砂場の砂」と「ガーデニングの土(培養土)」は、まったく別物なのです。
ちなみに、「公園の砂場の砂」は、市町村の予算で管理されてる資材ですので、持ち帰らないようにしてくださいね(笑)。
良い培養土、悪い培養土とは?
先ほど、植物を育てるために、いろんな用土を組み合わせて作ったものが「培養土」であるとお伝えしました。
ここでは、植物にとって、「良い培養土」「悪い培養土」についてご説明します。
植物の根には、
◆ 植物を支える
◆ 水や肥料を吸う
◆ 呼吸をする
などの役割があります。
そのすべてを、ムリなくこなせるのが「良い培養土」です。
さわった感じは柔らかく、腐植した葉っぱ(腐葉土)などがたくさん混ざっていて、ふかふかです。
水をかけると、表面にとどまることなく、すーっとしみこんでいきます。
しみこんだ水は培養土の中にしっかりとたくわえられ、さらに培養土の隙間には根が呼吸するための空気も含まれています。
このように、保水性・保肥性・排水性・通気性がよく清潔な培養土が、多くの植物にとって生育しやすい「良い培養土」といえます。
一方、「悪い培養土」は、全体がかたく締まっていて、根が思うように水や肥料、酸素を取り入れることができません。
そのため、根が弱り、やがて植物全体も弱ってきます。
普段からできるだけ「良い培養土」に触れてその感触やニオイを覚え、良い培養土と悪い培養土を見きわめられるようにしましょう。
☆☆☆ ONE POINT ☆☆☆
「良い培養土」は土の粒子が小さな団子状になり、隙間を作りながらバランス良く集まっている状態です。これを「団粒構造」といいます。「悪い培養土」が硬く締まっているのは、この団粒構造が壊れてしまっているから。団粒構造を作ってくれるのはミミズなど土壌生物なのでプランターでは復活させるのがむずかしそうですが、植え替え時に「赤玉土+腐葉土」を入れることで少し団粒化が期待できるそうですよ。
参照:「【第5回】プランター菜園の土づくり サカタノタネ園芸通信」
植物ごとに違う用土の配合
「良い培養土」は、多くの植物にとって育ちやすい生育環境となりますが、植物の種類や置き場所、使う鉢、水やりの頻度などによっては、配合に工夫が必要になることがあります。
例えば、
◆ サボテン
→水はけがいい配合
◆ 野菜
→水もち・肥料持ちがいい配合
◆ 室内
→清潔な人工用土での配合
◆ ハンギングバスケット
→軽い用土での配合
など、何を重視するかによって、使う用土の種類や割合いが変わるのです。
用土の特徴については、後ほどご説明しますので、何をどのくらいまぜるのか、試行錯誤しながら、オリジナルブレンドの培養土を作ってみてくださいね。
その培養土で植物がすくすく育ち、花や実をつけてくれたときの喜びは格別ですよ!
☆☆☆ ONE POINT ☆☆☆
人工的に作られた「清潔な用土」は軽いものが多いため室内園芸などで「清潔な用土」ばかりを配合すると培養土が軽くなりすぎることがあります。大きな観葉植物などは倒れてしまう恐れがあるので重い用土もまぜて倒れないように工夫をしましょう。
プランターの培養土の作り方
次は、「良い培養土」を作る具体的な方法についてご紹介します。
用土の種類と特徴
用土には、配合の基礎となる「ベース用土」、ベース用土に足りない性質をおぎなう「改良用土」、人工的に作られた清潔な「人工用土」などがあります。
まずは、それぞれの用土について簡単にご説明します。
【ベース用土】
◆赤玉土
保水性・排水性が良い代表的なベース用土。大・中・小粒があり腐葉土などの改良用土とブレンドして使う
◆鹿沼土
鹿沼地方の酸性土。見た目は赤玉土に似ているがサイズ分けはされていない。ツツジ科など酸性を好む植物に使う
◆荒木田土
粘土質の水田の土。保水性・保肥性は良いが排水性・通気性に劣る。水生植物に使うほか、保水性を上げるために改良用土として使うことも
◆黒土
有機質を多く含む柔らかい土。酸性~弱酸性。通気性・排水性が悪いので改良用土とブレンドして使う
◆真砂土(まさつち)
花崗岩が風化してできた山砂。粘土質で通気性・排水性が悪い。他のベース用土や堆肥などとブレンドして使う
◆川砂
花崗岩が風化し川で粘土質が洗われたもの。排水性が良く保水性・保肥性に劣る。サボテン・盆栽・挿し床に使われる
【改良用土】
◆腐葉土
広葉樹の落葉を腐熟させた改良用土。保水性・通気性がよく保肥性もある。改良用土としては万能
◆ピートモス
湖や沼に堆積したミズゴケ類が腐熟したもの。保水性が高く軽い。酸性だが酸度調整済みのものもある
◆ミズゴケ
保水性・排水性・通気性が良い。洋ランの植え込みに使われる。完全に乾くと再び水を吸うのに時間がかかる
◆バーク
樹皮を乾燥させ粒をそろえたもの。洋ランの植え込みの他、土の上においてマルチングや装飾に使われる
◆くん炭
稲のモミ殻を炭化したもの。カリ・カルシウムを含む。アルカリ性なので酸度の矯正にも使う。根腐れ防止効果もある
【人工用土】
◆バーミキュライト
ひる石を高温で焼成したもので軽い。通気性・保水性・保肥性が良い。無菌なので挿し木などにも使われる
◆パーライト
真珠石を高温で焼成したもの。通気性・排水性が良く保肥性は低い。軽いのでハンギングなどに使われる
◆発泡煉石
粘土を粒状化して焼成し発泡させたもの。ハイドロカルチャーなどで使用される。崩れにくい
他にもたくさんの用土がありますが、比較的よく使われるものをピックアップしてご紹介しました。
ほとんどの植物に使える基本のブレンドは、「赤玉土(ベース用土)6:腐葉土(改良用土)4」です。
植物別では、
◆観葉植物
「赤玉土5:腐葉土3:川砂2」
◆葉もの・実もの野菜
「赤玉土7:腐葉土2:牛糞1
苦土石灰を培養土10Lあたり10g」
◆根菜・さつまいもなど
「赤玉土9:腐葉土1
苦土石灰を培養土10Lあたり3g」
などのブレンドも。
また、水やりこまめ派さんには、水はけの良い「赤玉土5:腐葉土5」、水やりルーズ派さんには、水もちの良い「赤玉土6:腐葉土2:バーミキュライト1:くん炭1」などのブレンドがおすすめです。
これらをベースに、
「素焼き鉢で乾きやすいから黒土をまぜてみよう」
「ハンギングだから赤玉土を減らして軽いパーライトを多めに使おう」
という感じで、いろいろ組み合わせてみてくださいね。
植物ごとの配合例は、園芸サイトなどでも知ることができますよ。
参考:みんなの趣味の園芸
(植物名→育て方→用土(鉢植え))
迷ったときは参考にしてくださいね。
培養土をパワーアップさせるには
「良い培養土」の中には、たくさんの微生物がいるのをご存知ですか?
微生物たちは、次のように植物の成長を助けてくれているんですよ。
◆有機質肥料を根が吸収しやすいように分解してくれる
◆培養土の酸度を安定させてくれる
◆連作障害をおさえてくれる
◆病原菌から根を守ってくれる
◆微生物自体も栄養分になる
微生物は、堆肥などの有機物にたくさん含まれています。
《堆肥とは》 樹皮など発酵させた「バーク堆肥」や、おがくずと牛糞をまぜて発酵させた「家畜糞堆肥」などがある。肥料と土壌の特性をあわせもち土壌改良材として使われる。
堆肥は、培養土の2~4割ほど、すき込んで使います。
例えば、「赤玉土6:腐葉土4」の配合を考えている場合、「赤玉土6:腐葉土2:バーク堆肥2」にすると、微生物の量が増えますね。
ただし、堆肥は必ず完全に発酵したものを使うようにしてください。
未熟堆肥は、有害な微生物を含んでいたり、熱やニオイをもつこともあり、植物に悪影響を及ぼします。
購入時にニオイがあるもの、色にむらがあるものは避けるようにしましょう。
☆☆☆ ONE POINT ☆☆☆ 最近の堆肥や石灰はすぐに植付けられるものがたくさんありますが、植付けの1か月ほど前に配合しておかなければならない堆肥や石灰もあるので、購入する際に裏面の注意書きなどをチェックしてくださいね。
培養土の酸度をチェック
植物には、ツツジ科のように酸性土壌を好むもの、ラベンダーのようにアルカリ性土壌を好むものなど、好みの「酸度」があります。
酸度(pH)の値は0~14まであり、pH 7が中性で、これより数値が小さければ酸性、大きければアルカリ性です。
【酸性を好む植物】
(pH5以下)
アザレア、アジアンタム、サツキ、シャクナゲ、スズラン、ツツジなど
【アルカリ性を好む植物】
(pH7.5以上)
アイビーゼラニウム、アスパラガス、ガーベラ、クローバー、ダイアンサスなど
【酸度にこだわらない植物】
コスモス、ケイトウ、コリウス、バーベナ、パンジー、ベゴニア、ヒマワリなど
土壌の酸度(pH)が適性でないと、うまく肥料分を吸収することができず、葉が黄色くなったり生育不良になることがあります。
日本は雨が多く、培養土が酸性にかたよりやすいので、アルカリ性を好む植物を植える場合には、酸度(pH)を調整してあげましょう。
酸性の土壌をアルカリ性に矯正するには、苦土石灰など石灰質資材を施します。
pHを1上げるのに必要な苦土石灰は、培養土10Lあたり40gがめやすです。
リトマス試験紙などで培養土の酸度を測り、必要な量の苦土石灰をすき込みましょう。
逆に、アルカリ性を酸性に矯正する場合は、鹿沼土やピートモスなどの酸性用土をすきこみます。
また、肥料として園芸店などで販売されている「硫安(硫酸アンモニア)」でも酸性に矯正することができますよ。
少しの調整なら、大量に水を注げば、アルカリ分はある程度流れ出るので、そちらもぜひ試してみてくださいね。
古い土の再利用・処分方法
がんばって作ったオリジナル培養土も、数年経つと団粒構造や栄養分がなくなり、「くたびれた土」になってしまいます。
雑草の種や病原菌を死滅させるためにも、熱湯や太陽光で消毒しましょう!
使い終わった用土の再生方法
用土の再生法には、
◆太陽光線消毒
古土をシートなどに広げ、カラカラに乾くまで紫外線をあてて消毒する
◆熱湯・蒸気消毒
古土を容器に入れて熱湯をかけたり蒸し器に入れて殺菌消毒する。古い鍋に入れて15分ほど煮る方法もある
◆プランター太陽熱消毒
古土の入ったプランターの排水口にフタをして水をいっぱいにため、上にビニールを貼って太陽熱消毒する方法
などがありますが、いちばん簡単でおすすめなのは、「ゴミ袋利用の太陽熱消毒」です。
◆ゴミ袋利用の太陽熱消毒
1.古土をよく乾燥させ、ふるいにかけて根やゴミを取りのぞく
2.古土を水でしっかり湿らせ黒いビニール袋に入れて密閉する
3.梅雨前なら1か月、梅雨明けなら20日間ほど日光にあてる。週に1回ほど袋ごと上下を返してまんべんなく光があたるようにする
水分を含ませるのには、蒸気で高温消毒をする以外に、雑草の種を一度発芽させて枯らすという目的もあります。
袋から出したときに、それらの雑草があれば、取りのぞいてくださいね。
新しい用土とまぜて再利用
再生用土は、団粒構造が失われ、通気性・水はけが悪くなっています。
再利用する際は、
「再生用土5:赤玉土2:腐葉土3:くん炭(少々)」
など、新しい用土を半分ほど配合すると、培養土として使いやすいですよ。
育てる植物によって、こちらもオリジナルブレンドにチャレンジしてみましょう!
捨てる場合の注意点
古土の再利用ができない場合は、お住まいの地域の自治体の指示にしたがって処分しましょう。
大阪府では、普通ゴミに少しずつまぜて捨てることが許可されていますが、他の自治体では捨てられないことが多いようです。
引き取りサービスとしては、ホームセンターなどで、用土を購入した場合のみ、古土を引き取ってくれることがあります。
また、土の回収業者などもありますが、利用する場合は必ずホームページなどで見積もりを見てから依頼しましょう。
さいごに、近くの公園や山の中などに不法投棄するのは絶対にやめましょう。
用土も植物も、最後はどうするかを想像しながら計画的に購入し、お庭やベランダが地獄絵図にならないよう、上手に楽しんでくださいね!
まとめ
いかがでしたか?
今回は、初めての方でもオリジナルブレンドの培養土が簡単に作れるように、用土の特徴や配合のコツなどをご紹介しました。
植物のことを思いながら作った培養土なら,きっと植物も元気に育ってくれるはずです。
よいブレンドができたら、ぜひまわりのガーデナーさんにも教えてあげてくださいね!
【出典】
◆『図解家庭園芸 用土と肥料の選び方・使い方』加藤哲郎 農文協
【関連サイト】
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