毒のある園芸植物はこんなにたくさん!毒性の強い22種をご紹介

園芸植物_毒_危険_ジギタリス

山野草などにみられる有毒植物。

実は、園芸品種の中にも意外とたくさんあるのをご存知でしょうか。

今回は、有毒の園芸植物の中から、特に毒性の強い22種類をご紹介します。

素手でさわらない、安易に口にしない、などに気をつければ問題ない植物がほとんどなので、正しく理解して、安全にガーデニングを楽しみましょう!

死亡例のある有毒の園芸植物

まずは、誤って口にすると命を落とす危険のある園芸植物からご紹介します。

大人はもちろん、子どもやペットが口にしないようにご注意ください。

【スズラン】
キジカクシ科スズランイメージ【写真AC】

《有毒成分》
全草※1に強心配糖体※2のコンバラトキシンなど
※1 花・葉・茎・根など植物の全ての部分
※2 心臓の収縮力を強化する一群のステロイド配糖体
《健康被害》
口にすると吐き気、嘔吐など。多量に摂取すると心拍数・血圧低下、呼吸停止、心不全など
《症例》
・入院中の子どもが夜中にスズランを生けていたコップの水を飲み朝方死亡した
・アメリカのモンタナ州で子どもがスズランの赤い実を食べて死亡した
《注意》
・コンバラトキシンは水溶性、脂溶性のため、スズランを生けた水や、油で炒めた料理も有毒
・若芽がギョウジャニンニクに似るがスズランにはニンニクの匂いがないので区別する

【フクジュソウ】
キンポウゲ科
フクジュソウイメージ【写真AC】

《有毒成分》
全草に強心配糖体のシマリンなど
《健康被害》
口にすると嘔吐、脈の乱れ、呼吸困難、心臓麻痺、死亡など
《症例》
心臓病の薬と信じて根茎・根一株を煎じて飲み死亡した(心臓病に効くというのは誤情報)
《注意》
開花間近の芽はフキノトウとまちがえやすく事故例が多い

【グロリオサ】
イヌサフラン科
グロリオサイメージ【写真AC】

《有毒成分》
全草にアルカロイドのコルヒチンなど
《健康被害》
口にすると、口の中の激しい痛み、発熱、死亡など
《症例》
根がヤマノイモに似ることから高知市の男性が誤って採取。すりおろして食べて死亡した
《注意》
ヤマノイモに似るがグロリオサは粘らないので区別する

【トウゴマ】
トウダイグサ科
トウゴマイメージ【写真AC】

《有毒成分》
種子をしぼった圧搾残渣に糖タンパク質のリシンなど
《健康被害》
飲み込むと嘔吐、下痢、けいれん、幻覚、臓器の機能低下、死亡など
《症例》
種子をネックレスとして首にかけ傷口から毒成分が入り中毒をおこした
《注意》
種子はウズラマメに似るので注意

【ジギタリス】
オオバコ科
ジギタリスイメージ【写真AC】

《有毒成分》
全草に強心配糖体のジギトキシンなど
《健康被害》
口にすると吐き気、嘔吐、下痢、視覚異常、心臓機能停止、死亡など。皮膚に触れると接触皮膚炎など
《症例》
2008年富山県でコンフリーとまちがえ葉6枚をミキサーにかけて飲んだところ8時間後に吐き気をおこし嘔吐した(コンフリーは昭和40年代に健康食品とされたが肝障害をおこすピロリジジンアルカロイドを含むことがわかり現在は食品としての販売は禁止されている)
《注意》
・家庭菜園などでは食用植物といっしょに栽培しない
・ネコへの毒性が強いので口にしないように注意する

【トリカブト】
キンポウゲ科
トリカブトイメージ【写真AC】

《有毒成分》
全草にアルカロイドのアコニチンなど
《健康被害》
口にすると唇・舌・手足のしびれ、嘔吐、けいれん、不整脈、死亡など
《症例》
2009年札幌市でニリンソウとまちがえておひたしにして食べた高齢者夫婦が全身または下半身がしびれる中毒症状をおこした
《注意》
若芽を、山菜のニリンソウ、モミジガサ、ゲンノショウコなどにまちがえる事故が多発

【コルチカム(イヌサフラン)】
イヌサフラン科
コルチカムイメージ【写真AC】

《有毒成分》
全草にアルカロイドのコルヒチン
《健康被害》
口にすると嘔吐、下痢、皮膚の知覚減退、呼吸困難、死亡など。人の最小致死量は体重50kgでコルヒチン4.3mg程度
《症例》
2007年新潟県で夫婦がギョウジャニンニクとまちがえ炒めもの・おひたしにして食べて食中毒に。妻は快復したが50代の夫は死亡した
《注意》
・開花後に生じる葉がギョウジャニンニクやギボウシと似るので注意する
・球根をタマネギやジャガイモとまちがえる事故が多発している
・平成23~令和2年の10年間で10人の死者がでている(厚生労働省)

◆ コルチカム(イヌサフラン)とギョウジャニンニクの見分け方
1.コルチカムにはギョウジャニンニクのようなニンニク臭はない
2.コルチカムの葉は多数出るがギョウジャニンニクの葉は1~2枚
ギョウジャニンニクイメージ【写真AC】  ギョウジャニンニク

【スイセン】
ヒガンバナ科
スイセンイメージ【写真AC】

《有毒成分》
全草にアルカロイドのリコリン、不溶性シュウ酸カルシウムなど
《健康被害》
口にすると吐き気、嘔吐、下痢、発汗、死亡など。接触すると接触性皮膚炎など。リコリンの人の致死量は10g
《症例》
・2009年兵庫県でスイセンの葉をニラとまちがえて調理し食べた12人のうち8人が食中毒を発症した
・2008年茨城県でスイセンの球根をタマネギとまちがえて食べた児童5人が吐き気や嘔吐の症状を訴えた
《注意》
・熱による低毒化はできない
・葉をニラと、球根をタマネギとまちがえる事故が多発している
・平成23~令和2年の10年間での事故数は62件、患者数は207人で死者が1人でている(厚生労働省)

◆ スイセンとニラ・タマネギ・ノビルの見分け方
1.スイセンにはニラ・タマネギ・ノビルのように匂いがないので区別する
ノビルイメージ【写真AC】  ノビル

以上、死亡例のある毒性の強い園芸植物を8種類ご紹介しました。

有毒植物とまちがえやすい植物は、個人で収穫しても、ゆずったりもらったりしないのが無難ですね。

道の駅で買ったニラにスイセンが混ざっていた例もあるほどなので、注意が必要な野菜は、できるだけ信頼できるお店で購入するのがおすすめです。
※ 2007年5月青森県の道の駅で女性二人が買ったニラにスイセンが混入。吐き気を訴え受診、治療した

症状の重い有毒の園芸植物

次は、摂取した際、呼吸困難やけいれんなど、重い症状がでる園芸植物を13種類ご紹介します。

【ダチュラ(チョウセンアサガオ)】
ナス科
ダチュライメージ【写真AC】

《有毒成分》
全草にアルカロイドのヒヨスチアミンなど
《健康被害》
口にすると嘔吐、けいれん、呼吸困難、幻覚、瞳孔散大など
《症例》
・2007年福岡県でオクラに似たつぼみを食べた家族3人が、意識障害、幻覚の症状を訴えた
・2008年兵庫県で根をごぼうとまちがえて食べた2人がめまい、沈鬱、瞳孔散大、幻覚などをおこした
《注意》
根がごぼう、つぼみがオクラ、葉がモロヘイヤやアシタバ、種子がごまに似るので注意する

【ブルグマンシア】
ナス科
ブルグマンシアイメージ【写真AC】

《有毒成分》
全株にアルカロイドのヒヨスチアミンなど
《健康被害》
口にすると口の渇き、目のかすみ、瞳孔散大、嘔吐、呼吸困難など。汁液が目に入ると失明の恐れ。まれに花の香りをかいだ際に頭痛、めまい、吐き気など
《症例》
2009年倉敷市でコダチチョウセンアサガオの花を調理した人が、めまいや手足の弛緩など神経症状をおこした
《注意》
エンジェルス・トランペットの名で親しまれているが、剪定など作業時にはゴム手袋を着用し、作業後はよく手を洗うこと

【ロウバイ】
ロウバイ科
ロウバイイメージ【写真AC】

《有毒成分》
種子にアルカロイドのカリカンチン、葉にキモナンチンなど
《健康被害》
種子を誤って食べると激しいけいれんをおこし弓なりに体をこわばらせて苦しみ血圧が上昇する
《注意》
偽果(ぎか)をふるとカラカラと音がするので子どもたちが遊ばないように注意する

【クロバナロウバイ】
ロウバイ科
クロバナロウバイイメージ【写真AC】

《有毒成分》
種子にアルカロイドのカリカンチンなど
《健康被害》
種子を誤って食べると激しいけいれんをおこし弓なりに体をこわばらせて苦しみ血圧が上昇する
《注意》
茶花などに利用されることもあるが有毒植物としてあまり知られていないので注意する

【ケマンソウ(タイツリソウ)】
ケシ科
ケマンソウイメージ【写真AC】

《有毒成分》
特に根茎と葉にアルカロイドのプロトピンなど
《健康被害》
口にすると吐き気、嘔吐、下痢、呼吸不全、心臓麻痺など
《症例》
大脳中枢が麻痺することで眠くなる
《注意》
有毒植物としてあまり知られていないので注意する

【オキナグサの仲間】
キンポウゲ科
オキナグサイメージ【写真AC】

《有毒成分》
全草にプロトアネモニン、ラヌンクリン
《健康被害》
口にすると腹痛、嘔吐、けいれんなど。汁液が皮膚につくと水疱をともなう皮膚炎など
《注意》
子どもやペットがふれないように注意する

【オモト】
キジカクシ科
オモトイメージ【写真AC】

《有毒成分》
全草に強心配糖体のロデインなど
《健康被害》
口にすると呼吸困難、吐き気、嘔吐、血圧低下、全身麻痺など
《注意》
生薬で根茎を「万年青根」、葉を「万年青葉」とよぶが素人療法は危険

【ハナビシソウ】
ケシ科
ハナビシソウイメージ【写真AC】

《有毒成分》
完熟した種子以外の全草にアルカロイドのプロトピンなど
《健康被害》
口にすると嘔吐、体温低下、呼吸麻痺、心臓麻痺など
《注意》
花壇に植栽されていることが多いので子どもやペットが口にしないよう注意する

【ナンテン】
メギ科
ナンテンイメージ【写真AC】

《有毒成分》
全株に有毒成分がふくまれる。果実にアルカロイドのドメスチン、葉にアルカロイドのナンジニンなど
《健康被害》
口にすると知覚や運動神経の麻痺、呼吸麻痺など
《注意》
葉は料理の添え物として利用されるが口にしないように注意する

【カルミア】
ツツジ科
カルミアイメージ【写真AC】

《有毒成分》
全株、特に葉・花・蜂蜜にジテルペンのグラヤノトキシン類など
《健康被害》
口にすると口内の激しい痛み、多量のよだれ、腹痛、心拍数・血圧低下、呼吸困難など
《注意》
子どもやペットがふれないように注意する

【フユサンゴ】
ナス科
フユサンゴイメージ【写真AC】

《有毒成分》
葉と果実にソラノカプシンなどステロイド系アルカロイド
《健康被害》
口にすると腹痛、嘔吐、出血性下痢、呼吸困難、瞳孔散大、けいれんなど
《注意》
ヒヨドリが果実を食べることがあるが安全と思わず子どもが食べないように注意する

【ホオズキ】
ナス科
ホオズキイメージ【写真AC】

《有毒成分》
未熟な果実と葉にポテトグリコアルカロイドなど
《健康被害》
未熟な果実や葉を口にすると嘔吐、下痢、脈拍低下、呼吸困難、瞳孔散大など。妊娠中に根を口にすると流産のおそれ
《注意》
果実を使って音を鳴らす遊びをするときはよく熟したものを使用すること

【デルフィニウム】
キンポウゲ科
デルフィニウムイメージ【写真AC】

《有毒成分》
全草、特に種子と若苗にアルカロイドのデルフィニンなど
《健康被害》
口にすると吐き気、嘔吐、腹痛、けいれんなど
《注意》
ペットの事故が多いのでペットが口にしないよう注意する

この章では「口にしたり皮膚に触れると重い症状がでることがある有毒の園芸植物」を13種類ご紹介しました。

植物は、生きるためにいろんな成分を生成しますが、わたしたちはその成分の中の、人の健康によいものを薬、よくないものを毒として扱います。

植物に人間を攻撃する意思はない(と思う)ので、安易に口に入れない、素手でさわらない、ということを心がけながら、上手に植物とつきあっていきたいですね。

離れて愛でたいキョウチクトウ

池に葉が落ちると魚が死ぬ、というキョウチクトウの毒。

ちょっとくわしく見ておきましょう。

【キョウチクトウ】
キョウチクトウ科
キョウチクトウイメージ【写真AC】

《有毒成分》
全株、特に乳液、種子に強心配糖体オレアンドリンなど
《健康被害》
口にすると口内の痛み、しびれ、吐き気、嘔吐、下痢、けいれん、意識障害、死亡など。乳液が皮膚につくと湿疹などの皮膚炎をおこす。成人の経口致死量は葉5~15枚相当。生木を燃やした煙も有毒
《症例》
・40代女性が乾燥葉を手のひら一杯服用。吐き気、嘔吐、めまいにより救急搬送され3日後に退院した
・バーベキューでキョウチクトウの枝にマシュマロをさして焼き、煙を吸引して中毒をおこした
《注意》
・剪定する際は必ずゴム手袋を着用し、作業後は良く手を洗う
・剪定後の生木は絶対に燃やさない

池に葉が落ちると魚が死ぬ、生木を燃やした煙で中毒になる、となると、他の有毒植物とは少し様子が違いますね。

口に入れない、素手でさわらないことはもちろん、少し離れて観賞するのが正解かもしれません。

キョウチクトウは、原爆投下後の広島県でいち早く開花し、当時の人々を慰めてくれたそうです。

必要以上に嫌わず、見かけたら、かわいらしい白やピンクの花を愛でてあげてくださいね。

まとめ

いかがでしたか?

今回は、有毒の園芸植物の中でも、特に毒性の高い植物を22種類ご紹介しました。

□スイセン、コルチカム(イヌサフラン)は、ニラやギョウジャニンニクとまちがえる事故が多い
□食用ではない園芸植物は口に入れない(子ども、ペットに注意)
□園芸植物の手入れはゴム手袋をつけておこない素手でさわらない

ということでしたね。

ゴム手袋をすると手入れがしにくい、という方は、片方つけるだけでもずいぶん違いますよ。

わたしは左手にゴム手袋をして、ハサミを持つ右手は素手のまま。右手では植物をさわらないようにしながら作業します。

神経質になりすぎず、「この子たちはさわるとかゆくなる成分をもっているんだな」と頭のかたすみにおいて、ガーデニングを楽しんでいきましょう。

 

【出典】
◆『人もペットも気をつけたい 園芸有毒植物図鑑』土橋 豊 著/淡交社

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身近にある有毒植物/東京都健康安全研究センター
過去10年間の有毒植物による食中毒発生状況(平成23年~令和2年)/厚生労働省

【参考データ】
有毒植物による食中毒に関する注意喚起(リーフレット)/厚生労働省
おじいちゃん、おばあちゃん、食べないで! それ、有毒植物ですよ!!(リーフレット)/厚生労働省

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