「繊細さん」とは、HSP(ハイリー・センシンティブ・パーソン)と呼ばれる人たちのこと。
生まれつき感受性が高く敏感な気質をもった人たちのことを、HSP専門カウンセラーの武田友紀さんが、親しみを込めてそう呼んでいます。
今回は、HSPの方について書かれた武田さんの著書『「繊細さん」の本』をご紹介します。
目次
HSPである繊細さんってどんな人?
アメリカの心理学者エイレン・アーロン博士が提唱した「HSP」にあたる繊細さん。
具体的に、どんな特徴があるのかをご説明します。
繊細さんはただの「気にしすぎる人」ではない
エイレン・アーロン博士の調査によると、人間の5人に1人が「生まれつき繊細」な気質をもっている、ということです。
繊細さんとそうでない人では、脳のシステムに違いがあり、同じストレスにさらされたとき、繊細さんは、「神経の高ぶりに関連する物質」や、「警戒しているときに分泌されるホルモン」が、多く出るそうですよ。
驚いたのは、人間だけでなく、ネズミや猫、犬、馬、猿なども、ほぼ同じ割合いで敏感な個体がいる、ということ。
生きものたちが種として生き残るため、一定の割合で「慎重な個体」が生まれているのではないか、と考えられています。
繊細さんが気になるのはこんなこと
繊細さんは、分かりやすく言うと「感じる力が強い人」です。
人のちょっとした仕草や表情、こもったニオイ、空調の音、仕事上の小さな問題点など、普通の人は気づかない、小さな変化を感じ取ってしまいます。
例えば、職場での具体的な悩みとしては
◆職場で機嫌の悪い人がいると気になる
◆人と長い時間一緒にいると疲れる
◆小さなミスに気づいて仕事に時間がかかる
などがあげられます。
これを人に話して「気にしすぎだよ」「細かいこと言ってもしょうがない」などと言われることで、「気にしすぎる自分がおかしいんだろうか」と、さらに自分の感覚に自信がなくなるのです。
繊細さんは悪いことだけではなくいいことにも敏感
繊細さんは、「つらい」「疲れた」と感じやすい一方で、繊細さんにしか味わえない「いいこと」もたくさんあるんですよ。
「カフェの店員さんがやさしかった」など、ちょっとしたうれしいできごとを、深く味わい、幸せを胸いっぱいに感じることができるんです。
人によっては、店員さんのやさしさに気づかないこともあるので、これは、「感じやすい」力がもたらしたうれしい面ですよね。
ただし、「つらい」という痛みのサインは、生きものにとって、危険を見きわめる大切なサインなので、どうしてもそちらに意識が向きやすく、うれしい面に気づけないことが多いようです。
もったいないですよね。
この感じやすさを、なんとかコントロールできないでしょうか?
HSPの強い味方『「繊細さん」の本』
『「繊細さん」の本』では、繊細さんに大切なのは「気にしないこと」ではなく、「気になったときにどう対処するか」だとアドバイスをしています。
どうやら、感じやすさをもったまま、繊細さんが幸せに生きるヒントがありそうですね。
あなたは繊細さん?HSP自己診断
ここで、アーロン博士のHSP自己診断をしてみましょう。
少しでも当てはまるものは「はい」と答えてください。
□1 自分をとりまく環境の微妙な変化によく気づくほうだ □2 他人の気分に左右される □3 痛みにとても敏感である □4 忙しい日々が続くと、ベッドや暗い部屋などプライバシーが得られ、刺激から逃れられる場所にひきこもりたくなる □5 カフェインに敏感に反応する □6 明るい光や強い匂い、ざらざらした布地、サイレンの音などに圧倒されやすい □7 豊かな想像力を持ち、空想に耽りやすい □8 騒音に悩まされやすい □9 美術や音楽に深く心動かされる □10 とても良心的である □11 すぐにびっくりする(仰天する) □12 短期間にたくさんのことをしなければならないとき、混乱してしまう □13 人が何かで不快な思いをしているとき、どうすれば快適になるかすぐに気づく(たとえば電灯の明るさを調節したり、席を替えるなど) □14 一度にたくさんのことを頼まれるがイヤだ □15 ミスをしたり、物を忘れたりしないようにいつも気をつける □16 暴力的な映画やテレビ番組は見ないようにしている □17 あまりにもたくさんのことが自分のまわりで起こっていると、不快になり神経が高ぶる □18 空腹になると、集中できないとか気分が悪くなるといった強い反応が起こる □19 生活に変化があると混乱する □20 デリケートな香りや味、音、音楽などを好む □21 動揺するような状況を避けることを、普段の生活で最優先している □22 仕事をするとき、競争させられたり、観察されていると、緊張し、いつもの実力を発揮できなくなる □23 子供の頃、親や教師は自分のことを「敏感だ」 とか 「内気だ」 と思っていた 出典:『「繊細さん」の本』(武田友紀著/株式会社飛鳥新社/2018年)
以上のうち、12個以上「はい」があれば、HSPだと言われています。
12個より少なくても、その度合いが極端に強ければ、やはりHSPかもしれないそうですよ。
ちなみに私は「はい」が17個。予想どおり、HSPです。
本書で紹介されている対処法
『「繊細さん」の本』では、HSPと診断された人へ、繊細さんのまま幸せになる方法を提案しています。
その中から、なるほど!と思った職場での対処法を3つ、ご紹介します。
【合い言葉は「とりあえず」】
繊細さんは何かとシミュレーションをすることが多いようです。それに加えて細かいことに気づいてしまうので、なかなか仕事が完成しないことも。考えすぎて進めなくなってしまったときは「とりあえず」で動くのがコツ。「ベストじゃなくても物事は進む」ことを覚えましょう。
【マイルールで葛藤疲れを回避】
忙しくても周りへの配慮から自分ばかり電話にでている繊細さん。例えば、「電話を取るのは3回に1回」とマイルールを決めると、毎回悩まずにすみますね。3回に1回はでるので罪悪感もありません。慣れるまでは気を遣いますが、ぜひ実行してみてください。
【配慮がない=イジワルではない】
「私だったらあんな言い方しないのに」。配慮のできない人にイライラしていませんか?配慮する力には個人差があり、ごく自然に配慮できる繊細さんのほうがハイレベルなのかも。配慮が苦手な人もいると知り、配慮のできない人に振り回されるのはもうやめましょう。
本の中では、他にも、具体的な対処法がたくさん紹介されています。
「私だけじゃなかった」「今のままでいいんだ」と、励まされることも多く、私は、生きづらさが少し楽になりました。
著者の武田友紀さんも繊細さん
HSPは「敏感過ぎる人」などと訳されることがありますが、自らもHSPである著者の武田友紀さんはそれを嫌い、HSPの人々を「繊細さん」と呼んでいます。
本の中では、
・繊細さんが「気にする」のはあたりまえ
・「気にしないようにする」必要はない
・気になることにどう対応するかが大切
・対応しない、も選択肢に
・相手ではなく自分がどうしたいかを考える
・周りに配慮しすぎてふりまわされない
ということを繰り返し伝えながら、HSPの人たちを励ましています。
HSPの気質をもち、HSPの専門カウンセラーである武田さんならではの言葉がたくさん詰まった『「繊細さん」の本』は、1人で悩んでいるHSPの方の強い味方になってくれるはず。
先ほどの診断で、HSPと診断された方は、ぜひ一度読んでみてくださいね。
武田友紀さんのあたたかい言葉が、悩んでいる皆さんに届きますように。
まとめ
いかがでしたか?
今回はHSPの方へのエール本『「繊細さん」の本』をご紹介しました。
この本を読んで、「気にしすぎは自分の悪いところだ」と思いこんでいた人が、1人でも多く元気になってくれるとうれしいです。
また、繊細さんではない人の理解も深まれば、繊細さんにとって、さらに生きやすい社会になるのではないかな、と思いました。
【データ】
『「繊細さん」の本』
◆発行所:株式会社飛鳥新社
◆発 行:2018年8月
【出典】
◆マドレクリニック
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