2021年3月 書評テーマ【トラウマ本】

ここは、架空老舗書店の「晴天書房」。

看板娘のあんずと、常連で本好きの女性ライターたちが、おすすめの本を紹介します。

 

 

 

 

いつもは朗らかなあんずちゃんも、今回はホラーテンションですね。

「トラウマ本」を紹介するのはこちらの3人。

 

 

手づくり好き2男児ママ マロン
怖い話は小説もマンガも映画も苦手。この作品はてっきり普通のミステリーだと思って騙されました(涙)。

 

人間の裏の秘密が怖い  Yummy
一人出張でホテルによく泊まるけれど、幽霊に出会ったことは皆無。妖しやお化けより人間が怖いとコロナ禍で思う。

 

大人になった陰キャ ぐっち
幼い頃は、孤独で繊細で救われない系の主人公が出てくる物語が好きだったのよ~。本書は読む時期を間違えた。

 

こんな3人がおすすめする「トラウマ本」とは?

 

 

ホントに読みますか?
私はおすすめしません(笑)

【あらすじ】
夏休み前の終業式の日、小学校を休んだS君の家に寄った僕は、彼が首を吊って死んでいるのを発見。ところが警察が駆けつけるとなぜか死体が消えていた。混乱する僕の前に姿を変えて現れ、自分は殺されたと訴えるS君。僕は妹のミカとともに事件の真相を追い始める。

 

【ここがゾクッ】
本気でトラウマになっているので、読み返さずにこの書評を書いています。ゴメンナサイ。一応この本はホラーではなくミステリーです。でも幽霊的なものは出てくるし、主人公も家族も先生も主人公が仲よくしているおじいさんも、みんなどこか狂っていて、恐怖がジワジワ迫ってくる。主人公が犯人と疑う人物の家に忍び込む場面では、いつ見つかるかというハラハラ感も加わって、お化け屋敷並みに「キャー!!」と叫んでしまいそうな怖さ。物語全体に暗くてジト~ッとした空気が垂れ込めていて、気味の悪さ、居心地の悪さがあるのに、読みだしたら止められずぐいぐい引き込まれてしまう面白さもあるから余計に始末が悪い。そしてミスリードにまんまと引っかかって、あっと驚かされる物語の真相と、とても後味の悪い結末。イヤな汗をかいてしばらく気持ち悪さを引きずる「コワい話」が好きな人は、ぜひどうぞ。

あんず
あんず
気分が悪くなるのに最後までグイグイ読まされてしまうという、謎のパワーに満ちた一冊のようです。

 

 

岡山弁がぞわぞわと
怖さに滲みいるホラー小説

【あらすじ】
ときは明治の頃、岡山の宿場町の遊郭で、夜遅くに着いた客がその夜に売れ残った、容姿の醜い女郎の部屋にあがる。眠るまでのひとときに、女郎が身の上話を問わず語りで聞かせる物語。山に囲まれた寒村での生い立ちから彼女の生きてきた人生、隠してきた秘密が、岡山の方言を駆使してぽつぽつ語られると、ぞわぞわと恐怖が体にまとわりつき結末は・・・。

 

【ここがゾクッ】
岡山県人の友人に勧められて読んだのがきっかけ。確かに岡山の方言だけで書かれているけどめっちゃ怖いやん、というのが印象でした。岩井志麻子さんといえば、TVで被り物やボンテージ姿の姉御肌が印象的ですが、こんな怖い小説を書く作家なんですね。横溝正史の「八つ墓村」も岡山の山村で起こった事件をモデルにしているので、この小説と同じ既視感があります。楳図かずお先生の描くホラー漫画とも共通するかな。こちらは文章(方言)の力でぐいぐい読み込ませるので、身の毛のよだち方が違います。

「教えたら旦那さんはほんまに寝られんようになる・・・・・この先、ずっとな」なんて、ほの暗い女郎屋の4畳半でささやかれてごらんなさい。汚辱にまみれ地獄の淵を覗き込むような恐怖感とせつなさがあります。「ぼっけえ きょうてい」とは岡山弁で「とても怖い」という意味。本作は4つの短編が収録されており、他に「密告函」「あまぞわい」があります。「第6回日本ホラー大賞」「第13回山本周五郎賞」受賞作品。

あんず
あんず
方言というのがまた…ねっとりジットリ怖いです…。

 

 

陰キャの中二は読んじゃダメ!
夜木の魅力、今ならわかる

【あらすじ】
とある町で行き倒れそうになっていた謎の青年・夜木を助けた孤独な少女・杏子。彼は顔中に包帯を巻いて素顔は決して見せなかったが、仮住まいとなった彼女の家で、二人は徐々に心を通わせ始める。しかし、彼の呪われた身が、凶悪な事件へと駆り立てていき―。

 

【ここがゾクッ】
こっくりさんを試した少年が悪霊に体をのっとられ、傷を負うごとにその部分が醜い獣に変わっていくという設定&描写が非情すぎて、「もう乙一は読むまい…」と決心するきっかけとなった本。再読すると、夜木はなかなか魅力的なキャラクターであることに気づいた。
伸びっぱなしの長髪、包帯で隠された顔、黒尽くめの全身、他人を寄せ付けないオーラ(すぐ嫌われる)、無口でいつも一人、敬語、他人を避けているが本当は人とふれあいたい気持ち、些細なことでも喜ぶ繊細な感受性と寂しさ、怒ると容赦なく人をいたぶる残忍な獣性を秘めている、などなど。うん、まさに中二だな(笑)。
たぶん、昔の私が上記の資質をもっていて(多くの中学生にはそんな時期がある)、共感する部分が多かったからこそ、彼の受ける仕打ちの残酷さに当時は叩きのめされたんだと思う。今回は杏子視点で読めたので、彼女のことを夜木も救っていたことに気づけて、めでたく和解できたのでした。

あんず
あんず
誰もが思春期に感じた気持ちが書いてあるからこそ、怖さも身近に感じられるのでしょうね。

 

 

紹介した本まとめ

 

 

あんず
あんず
いかがでしたか?あんずはちょっと涙目です…
あんず
あんず
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