2023年6月 書評テーマ「作家の本棚『辻村深月』」

こは、架空老舗書店の晴天書房。私はお店番のあんずです。

今回は作家縛りシリーズ!
記念すべき第一回目の作家は「辻村深月」さんですっっ

辻村さんは、松坂桃李主演で映画化されたベストセラー『ツナグ』や
本屋大賞を受賞しアニメ化もされた『かがみの孤城』など、有名な作品の原作者です。

また、『映画ドラえもん のび太の月面探査記』の脚本を担当されていたりと、その活躍は多岐に渡ります。

今回は、そんな辻村深月さんの作品縛りでご紹介しましょう。

お店の常連さんに、おすすめの本を聞きました。

晴天書房の常連たち

辻村作品を読んだのは2冊目 マロン
本のテーマは婚活。婚活といえば「もてナイ」というお見合い番組をよく見てました。もうやらないのかな?
全作読んでた よっすー
先日出たファンブックでは交友関係の質量に改めて唸りました。あれだけ中ニ病を使いこなしながらコミュ強者とは凄い。
過去に責任を負える? YUMMY
言葉にできない心の内側をえぐられるような読書感は、この作家ならでは。豊かな感情のうずきに感動すら覚える。
小説以外で攻めてみた ぐっち
辻村作品を初めて読むド素人。ミステリーやエンタメから少し離れたみずみずしい青春絵本を選んでみました。

婚活で浮き彫りになる
自意識過剰で嫌な自分

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【あらすじ】恋人にふられ、婚活に疲れ果てつつも新しい相手を探し続けてきた西澤架。やっと出会えた相手、坂庭真美とある事件をきっかけに婚約するが、突然彼女は姿を消してしまう。消息を訪ねる中で、架は真美の「過去」や「葛藤」と向き合うことになる。

プレゼンテーター:
辻村作品を読んだのは2冊目 マロン
婚活ってこんなにしんどいの?というのが読後の率直な感想。主人公の架はけっこうモテてきたのに、「結婚したい」という恋人をはぐらかしてきたため三十代半ばでフラれてしまいます。そこから必死に婚活を始めますが、出会いは少ない上、結婚を意識している以上気軽には付き合えません。

恋愛ではなく婚活だからこそ相手を「評価」し、されなければならない。好みや基準は誰でも持っているもので、咎められるべきことではありません。でも大勢の中から選び、選ばれる立場に置かれた途端、その「評価する目」は傲慢さと紙一重になるのです。

そして出会った合格点の彼女・真美。一見「いい子」の彼女もまた、婚活を通じて家族や恋人、自分の傲慢さに気づき、悩みを深めていきます。ああしんどい、もっと気楽に行こうよ!と思うけど、結婚は人生の岐路。大いに悩むからこそ最後は晴れ晴れと前に進めるのかも?

結婚を意識したお付き合いの難しさがわかります。。。

心優しい小学生
×デスノート?!

【あらすじ】ぼくの幼なじみ、ふみちゃんは学校のウサギ達をとても可愛がっていた。あの朝、一人の大学生が小屋を訪れるまでは‥‥‥。
残酷な現場を見てしまったふみちゃんの心はその日からずっと壊れたまま。ぼくは彼女のため、あいつに<力>を使うと決めた。チャンスは一度きり。これはぼくの戦いだ。

プレゼンテーター:
全作読んでた よっすー
今作の主人公は小学四年生。気弱で優しい性格だが、ある特殊能力を持っている。その力を使って、彼は大好きな友達のため立ち上がります。デビュー四作目、辻村作品らしいミステリ色強めの成長物語。

辻村深月に特殊能力があるとしたら圧倒的な感情移入能力かもしれない。みずみずしい文体は子供の柔らかな心をそのまま掬い取っていて、読んでいるうち自然に「ぼく」に寄り添い、「ふみちゃん」の友人になれてしまう。
「ぼく」の能力は一見シンプルながらルールはなかなか複雑で、私も読みながら小さな友達のためにどうすれば良いかあれこれ考えたけれど、まさかまさかの展開で鳥肌が収まらなかった。

辻村作品の多くがそうであるように本作も他作品とリンクしているから、その後のふみちゃんと「ぼく」については他のいくつかの作品で知ることができます。本作は単独でも読めるけれど「子どもたちは夜と遊ぶ」の種明かし編でもあるので、未読の方はぜひ辻村ワールドでどっぷりと遊んでほしい。

小学生×ミステリ!面白そうです!

 

記憶の安全装置は、
外れると暴走する。

【あらすじ】美しい「思い出」として記憶された日々ーー。その裏側に触れたとき、見ていた世界は豹変する。無自覚な心の内をあぶりだす「鳥肌」モンの傑作短編集。部活で仲のよかった男友達「ナベちゃんのヨメ」、国民的アイドルになった教え子「パッとしない子」などヒリヒリする過去との対峙を5篇。

プレゼンテーター:
過去に責任を負える? YUMMY
頂点を極め国民的アイドルになった教え子が、母校の小学校にロケにやってくるという。

かつて彼の弟の担任だった教諭の美穂は、ざわつく学校内で子どもの頃のアイドルについて聞かれ「当時は、あまりパッとしない子だったのよー」とお決まりのセリフで煙に巻いていた。

その彼が「僕のことをパッとしない子と言いふらしているそうですね。先生みたいな人は大嫌いだし、先生には二度と僕を見て欲しくない」と真正面から見据えられて、娘にサインでも貰えたらと思っていた美穂は完膚なきまでに打ちのめされる。

記憶の信ぴょう性とは?自信がないだけにヒエ~ッと私自身が糾弾されているように読んだ。辻村深月さんは、その誤謬を丁寧に救い上げて、記憶とはいかに都合よく書き換えられるものか、立場によって見方が大きく異なる怖さを見せてくれる。あなたの過去は大丈夫?

自分の中で、都合よく記憶が改ざんされることってありますよね。それを指摘されることの怖さ。。。

 

誰をどんな風に好きでも大丈夫!
そっと背中を押してくれる絵本

【あらすじ】「すきなひといないの?」と、みっちゃんにきかれた。わかんないっていったけど、ほんとうはこうくんがすき。こんなにくるしいこの気持ちは「すき」?-辻村深月と今日マチ子が描く、みずみずしい「好き」の風景。

プレゼンテーター:
小説以外で攻めてみた ぐっち
本書の主人公は小学生。クラスの中で、好きな人に「すき」と伝えることが流行っている中、自分の気持ちを素直に打ち明けられないでいる。そして、ーわかんないっていったら、「じゃあ、それはすきじゃないんだよ」っていわれた。「ほんとうのすきじゃないんだよ」って。

「すき」、といったん口にしてしまうと、その言葉が手垢にまみれてしまいそうでこわくなる。そんな気持ちを、ほんの数行で言い当てられたようでドキッとした。シンプルな言葉の中に含まれるいろいろな気持ち。それを「当たり前」の中にあてはめられたくないんだ!という主人公の繊細な恋心に、思わずキュンとしてしまった。

私の「すき」とあなたの「すき」は、ちがって当たり前。それぞれに「ほんとうのすき」があっていい。そんな風に、誰かへの気持ちをポジティブにとらえるきっかけになるような作品だった。最後のどんでん返し、私は大好き。辻村作品、実は絵本もおすすめですよ。

「すき」の気持ちを通して、人それぞれ違って当たり前と思えるような作品ですね♪

ご紹介した本まとめ

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いかがでしたか?普段あまり本を読まない方も、好きな作家さんを見つけると読書が楽しくなりますよ♪