2023年8月 書評テーマ「平和」

こは、架空老舗書店の晴天書房。私はお店番のあんずです。

8月といえば、夏休み、花火大会、海、旅行・・・
暑さを吹き飛ばすほど、楽しいイベントが盛りだくさんですが、

先日迎えた終戦記念日など、平和について考える時期でもありますね。

今回は「平和」小説をご紹介しましょう。

お店の常連さんに、おすすめの本を聞きました。

晴天書房の常連たち

夫/息子の非武装地帯 よっすー
以前YUMMYさんに勧められた映画のタイトルをやっと思い出した。「生きる Living」でした!この夏必ず観ようと思います。  
rockな心が燃えている ぐっち
母がファンだった影響で、忌野清志郎の曲が身近にあった。彼が生きている「今」を見てみたかった。

 

戦場×料理×ミステリー!
若きコック兵達のほろ苦い青春

【あらすじ】「生き残ったら、明日は何が食べたい?」
惣菜屋を営む祖母に育てられたティムは、その食いしん坊を見込まれて特技兵(コック)に推薦される。銃とフライパンを持ち替えながら過酷なヨーロッパ戦線を戦い抜くティム達だったが、たびたび戦場や基地で奇妙な事件に遭遇する。

プレゼンテーター:
夫/息子の非武装地帯 よっすー
ノルマンディー作戦からナチスの終焉まで緻密に書き込まれている本作だが、実は「戦争」パートだけがこの本の主題ではない。むしろ消えた600箱の食料品の謎だったり、秘密裏にパラシュートを集めて回る不審な兵士や基地の幽霊騒ぎの真相だったり、コック長・エドの名探偵ぶりだったりする。そう、この小説は「戦争」にミステリーのジャンル「日常の謎もの」を掛け合わせた作品なのです。仲間たちのドラマパートも充実していて、本三冊ぶんくらいの密度がある。

中盤からは戦局が激化し、私の“推し”は逝ってしまった。ショックで本を投げそうになったが、でもこれこそが、とも思う。戦争を知らない層にとっては「平和の尊さ」を百回、千回習うより、たとえば「推し」や「聖地」への思いの方が、よほど戦火を退け、平和に近づけるような気がする。
とある人物を救うためティムが奔走する終盤は、連作形式を生かした総力戦になっていて構成も良いし、人種問題も丁寧に触れられており好ましかった。いつか直木賞を獲ってほしい作家さんの一人です。

日常の謎を取り入れたミステリー。独特な世界観です。

心と身体を使って確かめる
そこから“自分ごと”になっていく

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ヘウレーカ
【あらすじ】ふるさとを離れ、沖縄での高校生活を選んだ15歳の少女。沖縄の人々、文化、歴史に触れながら、沖縄と本土、そして自分との関係に思いをはせる。自分の目で見て考えて、「私にできることは何か」を模索しつづけた日々をみずみずしい感性でつづった3年間の軌跡。

プレゼンテーター:
rockな心が燃えている ぐっち
「基地のある島をもっと深く知りたかったから」という理由で単身、沖縄の無認可学校に入学した菜の花さん。併設する夜間中学に通うおじい・おばあや、自衛隊の駐屯地がある与那国島の少女、辺野古で座り込みを続ける人、かつての激戦地・読谷村出身の同級生など、さまざまな人と出会いながら、自身の「核」となるものを見つけていく過程が描かれている。

彼女がすばらしいのは、戦争をわかった気になっている“嫌な慣れ”を自覚していて、気になった場所にはとんで行って現地の人の話を聞き、沖縄の抱える諸問題と自身の接点を探ろうとしているところ。沖縄で起きていることが次第に「顔」を持ち始め、“自分ごと化”されていく様子は、本土に暮らす私たちにとっても決して他人事でなく、ときに厳しくも映る。

五感を使って人や物事と対峙することこそ、peaceの原点ではないか。ほんの小さな「なぜ?」からでさえ、世界は変えていけるという可能性を、彼女は行動で示してくれていると感じた。

戦争と向き合った少女の物語ですね。

ご紹介した本まとめ

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ヘウレーカ

いかがでしたか?子どもの頃は平和学習をしていましたが、大人になってからもふと考える時間を作ってみてはいかがでしょうか。