ここは、架空老舗書店の晴天書房。私はお店番のあんずです。
8月といえば、夏休み、花火大会、海、旅行・・・
暑さを吹き飛ばすほど、楽しいイベントが盛りだくさんですが、
先日迎えた終戦記念日など、平和について考える時期でもありますね。
今回は「平和」小説をご紹介しましょう。
お店の常連さんに、おすすめの本を聞きました。
晴天書房の常連たち
夫/息子の非武装地帯 よっすー 以前YUMMYさんに勧められた映画のタイトルをやっと思い出した。「生きる Living」でした!この夏必ず観ようと思います。
rockな心が燃えている ぐっち 母がファンだった影響で、忌野清志郎の曲が身近にあった。彼が生きている「今」を見てみたかった。
戦場×料理×ミステリー!
若きコック兵達のほろ苦い青春
【あらすじ】「生き残ったら、明日は何が食べたい?」
惣菜屋を営む祖母に育てられたティムは、その食いしん坊を見込まれて特技兵(コック)に推薦される。銃とフライパンを持ち替えながら過酷なヨーロッパ戦線を戦い抜くティム達だったが、たびたび戦場や基地で奇妙な事件に遭遇する。
プレゼンテーター:
夫/息子の非武装地帯 よっすー
ノルマンディー作戦からナチスの終焉まで緻密に書き込まれている本作だが、実は「戦争」パートだけがこの本の主題ではない。むしろ消えた600箱の食料品の謎だったり、秘密裏にパラシュートを集めて回る不審な兵士や基地の幽霊騒ぎの真相だったり、コック長・エドの名探偵ぶりだったりする。そう、この小説は「戦争」にミステリーのジャンル「日常の謎もの」を掛け合わせた作品なのです。仲間たちのドラマパートも充実していて、本三冊ぶんくらいの密度がある。
中盤からは戦局が激化し、私の“推し”は逝ってしまった。ショックで本を投げそうになったが、でもこれこそが、とも思う。戦争を知らない層にとっては「平和の尊さ」を百回、千回習うより、たとえば「推し」や「聖地」への思いの方が、よほど戦火を退け、平和に近づけるような気がする。
とある人物を救うためティムが奔走する終盤は、連作形式を生かした総力戦になっていて構成も良いし、人種問題も丁寧に触れられており好ましかった。いつか直木賞を獲ってほしい作家さんの一人です。
心と身体を使って確かめる
そこから“自分ごと”になっていく
【あらすじ】ふるさとを離れ、沖縄での高校生活を選んだ15歳の少女。沖縄の人々、文化、歴史に触れながら、沖縄と本土、そして自分との関係に思いをはせる。自分の目で見て考えて、「私にできることは何か」を模索しつづけた日々をみずみずしい感性でつづった3年間の軌跡。
プレゼンテーター:
rockな心が燃えている ぐっち
「基地のある島をもっと深く知りたかったから」という理由で単身、沖縄の無認可学校に入学した菜の花さん。併設する夜間中学に通うおじい・おばあや、自衛隊の駐屯地がある与那国島の少女、辺野古で座り込みを続ける人、かつての激戦地・読谷村出身の同級生など、さまざまな人と出会いながら、自身の「核」となるものを見つけていく過程が描かれている。
彼女がすばらしいのは、戦争をわかった気になっている“嫌な慣れ”を自覚していて、気になった場所にはとんで行って現地の人の話を聞き、沖縄の抱える諸問題と自身の接点を探ろうとしているところ。沖縄で起きていることが次第に「顔」を持ち始め、“自分ごと化”されていく様子は、本土に暮らす私たちにとっても決して他人事でなく、ときに厳しくも映る。
五感を使って人や物事と対峙することこそ、peaceの原点ではないか。ほんの小さな「なぜ?」からでさえ、世界は変えていけるという可能性を、彼女は行動で示してくれていると感じた。
ご紹介した本まとめ
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