2023年7月 書評テーマ「星」

こは、架空老舗書店の晴天書房。私はお店番のあんずです。

梅雨の時期が始まり、毎日ジメジメして湿気との闘いですねぇ。。。

そんな今回は「星」にまつわる小説をご紹介しましょう。
もうすぐやって来る、夏の夜空を見上げながら、のんびり読みたくなることでしょう!

お店の常連さんに、おすすめの本を聞きました。

晴天書房の常連たち

理科の中では地学が好き マロン
流星群の話を聞くと見たいと思うけど寒かったり眠かったりで断念。ちょうどいい時間と季節に流れないかな?

裸眼で見てみたい よっすー
去年は大台ヶ原に2度行きました。星空は良いですね。次は阿智村と、鳥取砂丘のナイトツアーも行ってみたい。

カニ座のロマンチスト YUMMY
星空を見るのが好き!屋久島、ランカウイ、マウナケアで好天に恵まれ、満天を楽しめた。プラネタリウムで爆睡するのはご愛敬だけど。

奥行きある題名に感動! ぐっち
中学生の頃、「つきのふね」が意味するものがよくわからなかった。本書は大人にこそ沁みるのかも。

占星術に興味あり ひかりん
めっちゃ信じているわけでもないけど、テレビや雑誌によくある占いは何気に見てしまう。

ロマンチックな文章で
宇宙と科学の片鱗に触れる

【あらすじ】流れ星はどこから来るのか、宇宙の中心にすまうブラックホール、真空の発見、じゃんけん必勝法、忘れられた夢を見る技術・・・。物理学者の詩情ただよう言葉と、幻想的な挿絵によって紡ぎ出される、不思議で美しいこの世の小さな脅威に触れる本。

プレゼンテーター:
理科の中では地学が好き マロン
理系の勉強はさっぱりダメ、でも宇宙のロマンには心惹かれ、『銀河鉄道の夜』は読書の原体験。そんな私がビビッと来たのが本書です。「科学エッセイ」である本書はとっつきにくい科学を文学的に紹介します。

第一話の始まりはこう。「海辺に佇んで、寄せては返す波の響きを聴いていると、『永遠』という言葉が心に浮かぶ」。なんと詩的!しかしそこから、実は潮の満ち引きも、太陽の巡りも、一日の長ささえ不変ではないという話が始まります。そして話は500億年後の未来へ、「永劫回帰」を唱えたニーチェが生きていた19世紀末へ。はたまた太陽から幾兆キロ離れた宇宙の彼方へ、地球に原始生命が生まれた頃の過去へ。

気の遠くなる宇宙や過去・未来に連れ出され、ふと気がつくとまた元の場所に戻っている。そんな「脳内トリップ」を楽しみたい方はぜひ!他にも、身近な話題から科学の世界へとつながる全22話が楽しめます。

脳内旅行で時空を越えましょう!

その日、人類は初めて星を知る
巨匠アシモフの出世作

【あらすじ】六つの太陽が空をめぐる惑星カルガッシュ。太陽が常に輝く星で、人々は闇を知らずに文明を謳歌してきた。だが若き天文学者が思いがけない事実を発見する。この世界に二千年に一度の夜がくるというのだ。ジャーナリストが嘲笑し、宗教団体が跋扈する中、その日は遂に訪れる。

プレゼンテーター:
裸眼で見てみたい よっすー
本書はアシモフの初期の短編「夜来たる」を、シルヴァーバーグが長編に仕立て直した作品です。
刻々と迫る「その日」。天文学者は計算を繰り返し、精神科医は人々の心に与える影響を探り始めます。一方そのころ考古学者たちは、二千年に一度の周期で文明が滅びていた痕跡を発見。それらから導き出されるひとつの答えとはーー。

『夜のない世界の人間が、生まれて初めて星空を見たら?』もうこの発想だけでわくわくしてしまう。もし私が全知全能だったら、名だたる世界のSF作家たちにこのお題で書いて貰うんですが。
人々が満天の星に圧倒される場面は是非ブラッドベリの文章で読んでみたい。ケン・リュウに頼んだらすごくエモーショナルな話が読めそう。「三体」の劉慈欣も外せない。
安倍公房や星新一はダークな世界観で楽しませてくれそう‥‥‥そのうちAIが彼らの文体を解析して可能にしてくれるかもしれません(まさしくSF!)。あなただったら、どんな展開を読んでみたいですか?

ロマン溢れるお話です♪

 

天空を逃げるオリオン、追うサソリ。

【あらすじ】昔の人々は種をまく時期や刈り入れの時期を、星を頼りに決めていた。この星々が星座になりギリシャ神話に結びつく。本書では星座にまつわるギリシャ神話の名場面を四季ごとに美しい星座絵や古星座図など、豊富なビジュアルで紹介。さらに世界各国に伝わる星座神話や伝説も繙く。

プレゼンテーター:
カニ座のロマンチスト YUMMY
7月は星空がテーマで、小説を探したけれど、星は死の象徴として扱われ、心が沈むなぁと思ったときに手にした本。子どもに読み聞かせていた星座神話だけれど、ビジュアルがきれいで、ほとほと疲れた夜に心が癒された。

ギリシャ神話のオリオンは、海神ポセイドンの息子。背が高く、美男子で腕のたつ狩人だったが、酒盛りで「天下に俺ほど腕のいい猟師はいない。熊やライオンだって赤ん坊みたいなもんさ」と自慢した。それを聞いた神々は、思い上がりの激しいオリオンに怒り、1匹のサソリを呼んで「オリオンを殺しておしまい」と命じる。

さすがのオリオンもサソリの毒にはかなわず、息絶えてしまった。この手柄でサソリは星座になり、英雄だったオリオンも星座になったが、サソリが空に昇ると、オリオンは地平線の下に逃げ隠れて、今でも天空で追いかけっこをしているのだとさ。

子どもと一緒に楽しめる神話本ですね。

 

不器用な心を抱えた4人のもとに
満月の夜、起こった奇跡

【あらすじ】心ならずも親友を裏切ってしまった中学生のさくら。進路や万引きグループとの確執に悩む孤独な日々の中で、唯一の心の拠り所だった智さんも、静かに精神を病んでいきー。先の見えない青春の闇の中を、一筋の光を求めて疾走する少女を描く奇跡のような傑作長編。

プレゼンテーター:
奥行きある題名に感動! ぐっち
「1999年の7の月、人類は滅亡する」という大予言を目前にした1998年が舞台。親友と疎遠になった際に助けてくれた恩人が徐々に心のバランスを失っていき、さらに放火事件と級友の売春疑惑が重なって・・・と、なかなか重いテーマを扱った本書。「あたしは(略)ちゃんとした大人になれるのかな」という漠然とした不安が、当時の空気感を思い出させる。

携帯もスマホもなかったあの頃。ただ一緒に過ごす、喧嘩をする、誰かを探しに走るーなど、人との交流には確かな体温があったように思う。壮大な夢や計画が叶わなくたっていい。目の前にいる、大切な人を救いたい。それぞれに臆病な心を抱えながら、ほんの少しの希望に賭けようとする登場人物たちの姿は、ストレートに胸にささるものがあった。

他人にとってはとるに足らない小さなもの。けれど人はそういったものに、実は救われているのではないか。「つきのふね」とは一体何を意味するのか?本書を読んでぜひ確かめてみてほしい。

皆さんは、世界が滅亡するとしたら何をしますか?

 

その羅針盤は自分そのもの
出生図から読み解く過去と未来

【あらすじ】満月の夜にだけ現れる満月珈琲店では、猫のマスターと店員たちが、極上のスイーツやドリンクでお客さまをもてなします。悩みを抱えた人だけが訪れるそこで、マスターは訪問客の星を詠む。悩める人々を星はどう導くのか。

プレゼンテーター:
占星術に興味あり ひかりん
本書は、イラストレーターの桜田千尋さんが描いている『満月珈琲店』の絵からインスパイアされた小説。大きな三毛猫のマスターと従業員のネコたちによるホロスコープを使った「星詠み」は、人生を前向きに捉えるきっかけをくれます。

スランプ中のシナリオライターの話では、出生図に沿って、なぜシナリオがウケなくなったのか?を知ることで、これからどう改善するべきかが分かっていきます。そんな自分をさらに輝かせる場所までも。
ホロスコープの説明が分かりやすく書かれているので、占星術を知らなくても読みやすい一冊です。

冒頭には、お店で出されるスイーツやドリンクのイラストがあり、作中で登場した時にイメージしやすいのもポイント。京都を舞台にした和×ファンタジーの不思議な世界観にどんどん引き込まれます。悩める人を美味しいものでもてなして、占星術で導いてくれる、そんな癒しに満ちた「満月珈琲店」に行ってみたくなります。

ぜひファンタジーな世界観に誘われてください♪

ご紹介した本まとめ

いかがでしたか?夜空にきらめく星を眺めながら読んで、ロマンチックな時間を過ごしてみてください♪