多肉植物が大好きなのに、なかなか上手に育てられない、という皆さん!
実は、多肉植物の多くは屋外の方が栽培に向いているということをご存知ですか?
わが家の多肉植物たちも、この18年間、一年中マンション(大阪市内)のベランダで元気に育ってくれていますよ。
今回は、一年を通して屋外で多肉植物を育てる方法ご紹介します!
日当たりのいい玄関先やベランダに、かわいい多肉植物を飾ってみませんか?
目次
多肉植物とはどんな植物?
多肉植物とは、葉や茎など体の一部に、多肉質の貯水組織を持つ植物のこと。
育て方をお伝えする前に、まずは多肉植物の生態について、簡単にご説明します。
故郷は砂漠や高山など過酷な環境
多肉植物の種類は、世界中に分布していますが、主な原産地は南アフリカやマダガスカル島、北米南部などの乾燥地帯です。
砂漠だけでなく、海岸や高山に自生する種類も多く、寒さや暑さ、潮風など、過酷な環境に耐えられるものがたくさんあるんですよ。
原生地では、岩の隙間や砂に半身を埋めるなどして、強い日光や乾燥などから身を守り生息する種類も。
たくましいですね!
原種だけでも1万種以上
多肉植物の種類は原種だけでも1万種を超え、園芸種も年々新しい品種が増えています。
ハマミズナ科、フウロソウ科、ベンケイソウ科、トウダイグサ科、ススキノキ科など、幅広い科目で多肉質の植物が見られ、サボテン科も多肉植物の一種です。
ただし、サボテン科は種類が多いため、園芸業界では「サボテン」と呼ばれて単独で扱われているのです。
☆☆☆ONE POINT☆☆☆ サボテン科の特徴は棘が生える「棘座(しざ)」があること。ただし、トウダイグサ科のユーフォルビア属にも棘がある(棘座はない)種類があるので見分けがつきにくいことも。さらにややこしいことに棘座はあるけど棘がないサボテンもあるそうですよ。サボテン科かどうかは棘ではなく棘座の有無で判断するといいですね。イメージ【写真AC】
蒸し暑さがとても苦手
多肉植物の故郷の多くは、カラッとした乾燥地帯。
少ない雨量で生きられるように進化してきた植物なので、「蒸れ」が苦手です。
暑さや寒さなどの「気温」には順応してくれる多肉植物も、水のやりすぎや風通しの悪さで、あっさり枯れてしまうことがあるんですよ。
よかれと思った水やりで大切な多肉植物を枯らしてしまわないように、次は、多肉植物の管理方法についてご説明します。
多肉植物を簡単に育てるコツ
多肉植物は、生育する時期によって、「夏型」「春秋型」「冬型」の3タイプに分かれます。
生育期にあわせて管理をすることが、上手に育てるための大切なポイントです。
迷ったら乾かし気味の水やりを
まずは、多肉植物の生育期について、ざっくりご説明します。
【夏型】
春~秋に成長し、冬に休眠する
例)サボテン、ガステリアなど
【春秋型】
春と秋に成長し、冬と夏に休眠する
例)エケベリア、セダムなど
【冬型】
秋~春に成長し、夏に休眠する
例)アオエニウム、リトープスなど
きっちりと線引きできるわけではありませんが、「冬型のタイプは夏に休眠するんだな」という感じで覚えておいていただければと思います。
次に、成育期別の水やりを、こちらもざっくりご説明します。
【生育期】
鉢の土全体が乾いたらたっぷりと
【休眠期】
月1~2回、鉢の土の1/3が湿る程度
多肉植物の水やりは、生育期か休眠期かによって、やり方が違います。
実は、生育期だけではなく、多肉植物の種類や植えられている鉢、置き場所によっても水やりは変わるんですよ。
けれど、栽培になれていない方にとって、それらを判断するのはむずかしいですよね。
そこでお伝えしたいのが、できるだけ簡単に、枯らさないように水やりをするコツです。
それは、
1.必ず土が「完全に乾いている」期間をつくること
2.生育期か休眠期か分からないときは「土が完全に乾いてから」土全体が湿る程度に水をやること
(成長しているとわかった時点で生育期の水やり方法に切り替える)
の2点です。
例えば、観葉植物などは、土全体が完全に乾く前に「土の表面が乾いたらたっぷりと」水やりをしますが、多肉植物は、いったん完全に土を乾かすことが、失敗しない水やりのコツなのです。
迷ったときは「乾かし気味」に。
休眠期にざばざばと水やりを続けていると、枯れるというより溶けちゃいますよ。
☆☆☆ONE POINT☆☆☆ わが家の多肉植物の水やりはかなりズボラです。一年中ベランダに置いたまま、生育期に関係なく春~秋は1週間に1回たっぷりと、冬は2週間に1回湿る程度。やり過ぎにも水不足にもならない楽チンな水やりです。多肉植物の栽培になれてきたらご自分と多肉植物の「いいタイミング」を見つけると管理もらくになりますよ。
多肉植物が喜ぶ置き場所
先ほどもお伝えしましたが、多肉植物は「蒸れ」を嫌います。
他には、「長時間にわたる真夏の直射日光」「長雨」「霜」なども苦手です。
つまり、多肉植物の置き場所として最適なのは、屋外の「1日5時間ほど日が当たる」「雨や霜のあたらない」「風通しのよい」場所、ということですね。
わが家では、一年中、お昼ごろから夕方まで日があたるベランダで、セダムやエケベリアなどが元気に育っています。
ガステリアやハオルチア(十二の巻)などは、冬の寒さにあてることで、春には花を咲かせてくれるようになりましたよ。
ちなみに、セダムやエケベリア、ハオルチアの耐寒温度は5℃、ガステリアは8℃といわれています。
大阪の冬の最低気温は0℃まで下がることもありますが、乾かし気味に管理をすることで、18年間、枯れることなくベランダで越冬してくれています。
買ったばかりの多肉植物は、5℃を目安に室内に取り入れるなどして、来年は3℃、再来年は……、というふうに、徐々に屋外で越冬できるように訓練してみてはいかがでしょうか。
☆☆☆ONE POINT☆☆☆
以前は多肉植物を室内に飾っていましたが日照不足でひょろひょろに間延びしてしまいました。例えば、屋外(7月・晴天)の日照度が約80,000ルクスであるのに対し室内の東南向きの窓辺は約8,500ルクス。明るく見えても光量は比較になりません。寒さ・暑さが心配で室内に取り込みたくなるかもしれませんが相当デリケートな種類でなければ多肉植物の順応性を信じて屋外での冬越し・夏越しに挑戦してみませんか?
参考:[半日陰]ってどんな感じ? 植物に必要な光の量とは
簡単な方法でかわいい姿に更新
多肉植物の株の更新や繁殖はとても簡単です。
特に、セダムやクラッスラなどは、葉っぱや頂芽を使って、新しい株を作ることができるんですよ。
参考までに、わが家での更新の手順をご説明しますね。
【手順1】
ハサミで成長点を切りとる
Photo by kii watanabe
【手順2】
菌が入るのを防ぐため切り口を2~3日乾かす
(私はせっかちなのですぐに植えちゃいますが)
Photo by kii watanabe
長く放置していると、根っこ(赤い部分)が出てきます。
Photo by kii watanabe
【手順3】
鉢に植える(のせる)
Photo by kii watanabe
以上です。
簡単ですよね。
植えてから数日で根がつき、グラグラしなくなるので、それから水やりをはじめてくださいね。
他の多肉植物も、同じように天挿し※や葉挿し、株分けで簡単に更新できるものが多いので、「かわいい姿にもどしたい」「友人にゆずってあげたい」などというときには、ぜひ挑戦してみてください。
※ 天挿しは枝の頂芽部分を使った挿し芽、葉挿しは葉を使った挿し芽、株分けは親株から根や茎を切り離して新しい個体をつくる方法。挿し芽は親株の一部を土にさして発根させ新しい個体を作る方法
なお、切りとった残りの茎からも新しい芽が出てきますが、多肉植物は繁殖力が強く、どんどん増えてしまうので、思い入れがないのであれば、「かわいそう」「もったいない」と思わず、思い切って処分するようにしましょう。
☆☆☆ONE POINT☆☆☆ 「頭の部分を切って残りは捨てちゃうなんてかわいそう……」と思われるかもしれませんが多肉植物の栽培で「かわいそう」は封印することをおすすめします。多肉植物は葉っぱ1枚で簡単にクローンができるので極端にいうと葉っぱの数だけ増えるのです。更新の際には心を鬼にして古い株や葉っぱを処分しないと庭やベランダが多肉植物だらけになってしまいますよ(かつてのわが家のように)。イメージ【写真AC】
多肉植物の栽培に必要なアイテム
次は、多肉植物を育てる上で、あると便利なものなどをご紹介します。
多肉植物を育てる予定がない方も、ぜひ、妄想での栽培を楽しんでくださいね!
多肉植物を買ったら準備するもの
【鉢】
多肉植物の購入時、プラ鉢に植わっていれば、そのままお気に入りのポットなどに入れて楽しむことができますよ。
軟らかいビニールポットに植わっている場合は、ポットの底で水が腐りやすいので、プラ鉢や素焼き鉢に植え替えましょう。
ただし、休眠期の場合は根っこをさわらないほうがいいので、生育期に入るまで植え替えはおあずけです!
【用土】
実はわりとどんな土でも育つんですが……。専用用土を使えば間違いないですね!
【飾り石】
株元に石を敷いておくと土のカビ防止に!
【肥料】
買ってきてすぐに錠剤を根元にまいておけば、水やりのたびに少しずつ溶け出して手間いらずです!
即効性がある液体肥料もあります。
植替え時などにあると便利なもの
【ピンセット】
黄色くなった葉を取るときなど、指を使うと他の葉っぱにあたり落としてしまうことも。ピンセットがあると込み入った部分のお手入れににも便利です!
【水差し】
多肉植物は鉢が小さいものが多いので、肥料差しなど注ぎ口の細いもののほうが水やりしやすいですよ。
冬越しが心配なときはミニ温室も
【ミニ温室】
多肉植物を屋外で管理したいけど、真冬はさすがに心配……、という場合におすすめです。
ただし、厳寒期以外は蒸れ防止のため、扉を開けるなどして、できるだけ風通しをよくしておきましょう。
まとめ
いかがでしたか?
多肉植物を屋外で栽培するのに大切なことは
□長時間の真夏の直射日光を避ける
□雨・霜のあたらない場所に置く
□風通しの良い場所に置く
□生育期によって水やりを変える
□水やりで迷ったら乾かし気味に
ということでしたね。
こんなこむずかしい話をしながら、実家の庭で「梅の盆栽の根元にみずからタネを飛ばしてセルフ寄せ植えになっていたサボテン」を思い出しました。
盆栽の土で、梅と一緒にスクスクと育つサボテンは、私たち人間が伝え合う「たにくしょくぶつのそだてかた」をどう思っているのでしょうか。
植物の可能性は私たち人間の知る限りではありませんね。
みなさんもぜひ、多肉植物たちが巻き起こす「これ、どうゆーこと!?」を見つけて、楽しんでくださいね!
【出典】
◆『サボテン・多肉植物 330種』
【参考記事】
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