NHKの連続テレビ小説「おかえりモネ」で、舞台の一つとなっている気仙沼市。
東日本大震災では、津波や火災によって大きな被害を受けました。
その気仙沼市に、津波被害の様子をそのまま残し、震災遺構として展示されている高校があるのをご存知でしょうか?
今回は、その高校(気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館)で見た光景をご紹介します。
また、気仙沼旅行中に遭遇した「山形県沖地震(マグニチュード 6.7)」についても、お伝えしたいことがあるので、ぜひ最後までおつきあいください!
目次
気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館で実感したこと
2019年、気仙沼の旅で「気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館」へ行きました。
そこで目の当たりにした津波被害の状況と、あらためて「重要」だと感じたことについてお伝えします。
気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館とは
Photo by kii watanabe
「気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館」は、津波で大きな被害を受けた宮城県気仙沼向洋高等学校の校舎を、被災当時のまま残し、震災遺構として展示している施設です。
当時の様子を再現した映像や、実際の救助の写真なども展示され、当時の様子をうかがい知ることができます。
それでは、実際に被害を受けた校舎の様子を見ていきましょう。
宮城県気仙沼向洋高等学校の被害の様子
Photo by kii watanabe
宮城県気仙沼向洋高等学校の内部は、撮影が許可されていました。
そこで撮影した中から、何枚かをご紹介します。
一瞬、「テーマパークのアトラクション……?」と思うような写真もありますが、これらはすべて、実際におきたできごとです。
校舎3階(高さ8メートル)の教室に突っ込んできた車などを見ながら、津波の威力を想像していただけたらと思います。
【1階 保健室】
ベッドや車いすらしき物が見えます
Photo by kii watanabe
【階段】
階段や廊下などは修繕されているようでした
Photo by kii watanabe
【電気磁器室】
南三陸町から流されてきた車、など
Photo by kii watanabe
Photo by kii watanabe
Photo by kii watanabe
【4階】
流されてきた冷凍工場が激突したあと
Photo by kii watanabe
外から見た激突あと
Photo by kii watanabe
スポンジは冷凍工場の壁材
Photo by kii watanabe
津波が到達した位置までさびたレターケース(地上約12m)
Photo by kii watanabe
少しでも高く上がるため屋上に積まれた机Photo by kii watanabe
この机を見ると、当時の緊張感が伝わってきますよね。
もし、津波がそこまで上がってきたら、机なんて、おそらく簡単に流されてしまいます。
そこにいた人たちは、それだけ追い詰められ、必死だったのだと思います。
では、その人たちは、どうなったのでしょうか?
次は、地震当日の避難と死傷者の状況をご紹介します。
地震当日の避難状況と死傷者数
地震当日、校内には約170名の生徒がいました。
地震の直後、生徒たちはグラウンドに集合。
当時、校舎は工事中だったため、生徒たちは屋上への避難ができず、教員の引率で、近くのお寺へ避難しました。
その後、さらに高台にある中学校へ避難。
その移動距離は約2㎞に及んだといいます。
一方、学校に残った教職員や工事関係者45名は、校舎の屋上へ避難。
先ほどお伝えした、屋上で机を積んでいたのは、この方々だったんですね。
結果として、気仙沼向洋高等学校にいた生徒、教職員、工事関係者は、全員無事でした。
気仙沼向洋高等学校は、海岸からわずか500mの場所にあり、日頃から津波災害に対して意識が高かったことが、迅速で的確な避難へつながったといわれています。
震災遺構のすさまじい光景を見ただけに、そこにいた人たちがみんな助かっていて、本当によかったと思いました。
【伝承館を見学して感じたこと】 防災を考えるうえで、一番大切なのは「こころがまえ」です。もし、向洋高校のみなさんが「津波なんか来ない」と思いながら訓練をしていたら、何百回繰り返しても当日は役に立たなかったでしょう。実際に何度も津波被害にあい、その怖さがちゃんと受け継がれているからこそ、生徒たちも迅速で的確な避難ができたのです。
北海道の有珠山の噴火で死傷者がひとりもでなかったのも、繰り返される噴火の歴史の中で、住民がハザードマップをよく理解していたことが一因でした。
◆参考記事:大きな災害でも死傷者はゼロ!有珠山噴火に学ぶ「全員が助かる避難」
「自分は災害には遭わない」と考えず、住んでいる地域ではどんな備えが必要かをイメージして、本気で備えておくことが大切なのです。
気仙沼市で山形県沖地震に遭遇した分かったこと
次は、気仙沼を旅行中、山形県沖地震に遭遇して分かった「正常性バイアス」の怖さについてお伝えします!
宿泊したホテルは3階建て
気仙沼市の旅行で宿泊先を決める際、あまり深く考えなかったのですが、ホテルに到着してみると、まさかの「3階建て」でした。
気仙沼市といえば、津波のイメージが残っているため、「津波がきたらどこへ逃げるんだろう……?」と不安になりつつ、「まぁ、大丈夫よね」と、避難経路も確認せずに夜を迎えました。
お風呂からあがって、そろそろ寝ようか、という夜10時半ごろ。
スマホの緊急地震速報の警告音が、部屋に鳴り響きました。
最大震度6強!山形県沖地震発生
スマホの警告音とほぼ同時に、テレビからも大音量の警告音が。
ニュースキャスターたちは、しきりに安全確保を呼びかけますが、こうなるともう、どうしていいか分からないんですよね。
お風呂あがりでラフな服装だったため、「とりあえず着替えなきゃ!」と思いついたものの、なんと浴衣に着替えるしまつ。
「いや、これじゃアカン!」「でも、きっと大丈夫、大丈夫……」を頭の中で繰り返しながら、震度3程度の揺れをやり過ごしました。
簡単には解除できない「正常性バイアス」
私は防災士の認定資格試験に合格しています。
普段から災害の情報や映像を見ているにもかかわらず、実際に地震にあうと、このありさまでした。
そのときの頭の中は、パニックというよりは「正常性バイアス※」にかかっている状態。※ 先入観にとらわれ異常事態に直面しても「正常の範囲内」と誤って判断してしまうこと。人の心を守る仕組みだが非常時には避難の判断を遅らせる原因となる
頭の中は、「大丈夫、大丈夫……」でいっぱいでした。
災害時、すばやい避難を遂行するためには、「正常性バイアスをいかに早く解くかが大きな課題」といわれています。
正常性バイアスなどの思い込みは、訓練を重ねることで解きやすくなるそうですよ。
宮城県気仙沼向洋高等学校のみなさんの迅速な避難を考えると、なるほど、納得ですね!
まとめ
いかがでしたか?
今回は、実際の津波被害の様子を見学できる「気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館」をご紹介しました。
また、「(本気の)訓練の大切さ」や「正常性バイアスの怖さ」についてもお伝えしました。
テレビで見る災害を「自分ごと」として見るのは、なかなかむずかしいですが、「まさか自分が災害にあうなんて……」とならないためにも、普段から身のまわりで起きそうな災害をイメージして対策しておきましょう。
都会では、パニック時にスーパーからなくなりやすいものを多めにストックしておくことも、重要な対策ですよ!
【データ】
◆ 気仙沼市 東日本大震災遺構・伝承館
【出典】
◆震災遺構をあるく② 気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館「津波の恐ろしさをリアルに伝える 震災遺構・気仙沼向洋高校旧校舎」
◆『わが家の防災ハンドブック』山村武彦 監修/家の光協会
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