この言葉があれば生きていける。「愛のフレーズ」が載っている本

ここは、架空老舗書店の晴天書房。

 

お店番のあんずと、常連で本好きの女性ライターたちが、おすすめの本を紹介します。

 

 

 

晴天書房の常連たち

大人な恋に憧れる ぐっち
ストレートな愛の言葉もいいけれど、相手が本当に必要としている言葉を選べるのが大人なんだと思うな。

はや!結婚30年 ヤミー
縁あってとはいえ夫と暮らして30年。踏み込まない、追い詰めない距離感が上手くいってるのか???

 

あんず
こんな常連さんたちがチョイスした、「愛のフレーズ」が載っている一冊とは?

 

 

王女とボディーガードの
往年の名画を思わせる一篇

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たとえ君が誰だろうと
おれにとっては君は
侍女のサリナだよ
普通の女性の…

 

(あらすじ)
来日したアルマ王女が侍女をつれて失踪した。即位前の自由の身のうちに一生の思い出を作りたいと、身分を隠して獠にボディーガード兼ガイドを依頼してきたのだった。獠のもっこりから王女を逃すべく侍女と入れ替わる作戦だったが、王位を狙う者が彼女を襲って―。

 

獠のガードで無事に日本での滞在を終えた二人。最後まで獠に嘘をついていたことが心残りだった王女は、別れ際に自国の言葉で、「ごめんなさいわたし…あなたをだましてた でもわたしはあなたの前ではふつうの女でいたかった… そして好きな男(ひと)と一生に一度の思い出がほしかった…」と告白する。すると獠は、彼女と同じ言葉で、上記のセリフを返すのだった。

この物語で秀逸なのは、獠にわからないように発せられた彼女の告白に、獠が返事をしていることだろう。王女は最後の日、侍女のふりをして獠と一日デートをするが、帰国後は二度と国外に出られぬ掟が待っている。獠の言葉は、ささやかな彼女の夢が詰め込まれた最後の一日を、まぎれもない“彼女自身の”ものにしてくれたにちがいなかった。

その日見たもの、聞いた言葉を、彼女は生涯忘れないだろう。20年以上経った今でも、この物語が読者の胸に輝き続けているのと同じように。

あんず
アルマ王女は、獠ちゃんに分からないよう母国のセリジナ語で想いを打ち明けたのに、獠ちゃんはセリジナ語もマスターしていたんですね。粋だなぁ。

 

 

 

死が二人を分かつとも
あなたの傍らで眠ることが
私たちの成就。

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急がなくては

急がなくてはなりません
静かに
急がなくてはなりません
感情を整えて
あなたのもとへ
急がなくてはなりません
あなたのかたわらで眠ること
ふたたび目覚めない眠りを眠ること
それがわたくしたちの成就です
辿る目的地のある ありがたさ
ゆっくりと
急いでいます。

 

「現代詩の長女」と称せられる茨木のり子は、厳しいほどに自分を見つめ、律しながら、凛とした魂のありようを詩に綴っています。19歳で終戦を迎えて詠った「わたしがいちばんきれいだったとき」には、戦争でなにもかも台無しになった悔しさを詠いながら、未来への生命力にあふれています。有名な「自分の感受性くらい」は、自分のできなかったことを人や社会のせいにするな「自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ」と締めくくる潔さがほんとうにカッコイイです。

お医者さまの夫君とは見合い結婚で、彼女が49歳のときに肝臓がんで亡くなります。この詩集は、2006年に79歳で没してから友人であった谷川俊太郎が選者となって刊行されたものです。やっと夫と共に眠れる、それが生きる目的なら、やすらかな旅立ちであったでしょう。これが夫婦の成就なら、そんな伴侶に巡り合った幸福を感じずにいられません。

あんず
凛として強く、情にあふれたお人柄が伝わってきます。

 

 

ご紹介した本まとめ

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あんず
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※サムネイルの表紙は『版元ドットコム』より引用